Emergency Services Fallback — 緊急呼を4G/E-UTRAへ移して成立させる仕組み¶
学習目標¶
この章を読み終えると、次のことができるようになります。
- Emergency Services Fallback が「緊急呼QoS/VoNR緊急呼を提供できないセルで、IMS緊急呼を4G/E-UTRAへ移して成立させる仕組み」であることを説明できる
- 起動のきっかけが「音声一般のQoS要求」ではなく UEの緊急サービス要求(緊急指示を伴う Service Request / Registration) であることを、EPS Fallback と区別して説明できる
- フォールバック先が 4G/EPS だけでなく 同一5GC配下のE-UTRA(NG-RAN内のLTE) にもなり得ることを説明できる
- 未登録UE / 限定サービス状態のUE でも緊急呼のためにフォールバックが許容され得ることを説明できる
- 移行方式(Handoverベース/Redirectベース)が EPS Fallback と同型であることを図示できる
前提知識¶
- Emergency(緊急通報) — 本章はその緊急呼を「別RATへ移して成立させる」応用。未登録受付・認証省略(NIA0/NEA0)・優先度はそちら
- EPS Fallback(一般音声のフォールバック) — 本章は「緊急呼版のフォールバック」。トリガーと移行先の違い が主題
- Handover(ハンドオーバ) — Handoverベースの移行はInter-RAT Handoverの一種
- Registration(初回登録) — 緊急指示付きの登録種別(Emergency Registration)を含む
- 補助: AMF / SMF / PCF
この章で学べること¶
- Why — なぜ「緊急呼専用」のフォールバックが要るのか
- Basic Concept — 「緊急の要求が来たら、待たずに実績あるRATへ案内する」という考え方
- EPS Fallbackとの3つの差分 — トリガー・フォールバック先・UE状態
- Architecture — Emergency Services Fallbackに関わる5GC・4G(EPC)・NG-RANの登場人物
- Procedure — Call Flow — 緊急サービス要求の検知 → RANがフォールバック起動 → 4G/E-UTRAで緊急呼成立
- Handoverベース と Redirectベース — N26の有無による2つの移行方式
- EPCとの比較 / Release差分 / Trouble Shooting / FAQ / Practice
Why — なぜ「緊急呼専用」のフォールバックが要るのか¶
VoNR と同様、5G初期展開では NR上で緊急呼QoS(VoNR緊急呼)を提供できるセルが限られていました。無線(NR)やコア(5GC)は使えても、そのセルが緊急呼の音声を運べないことが多かったのです。
一方、4G(LTE)のVoLTE・IMS緊急呼はすでに広く実運用されており、緊急呼を安定して成立させられます。緊急通報は人命に関わるため、「NRで緊急呼が成立しないなら、実績ある4G/E-UTRAへ移してでも必ず成立させる」 ことが強く求められます。
この「UEが緊急サービスを要求したときに、UEを5GS(NR)から4G/E-UTRAへ移して緊急呼を成立させる」仕組みが Emergency Services Fallback です。3GPP TS 23.502 §4.13.4.1(節番号の枝番は版により変わり得るため 要確認)に規定されています。
一般の音声呼を移す EPS Fallback(TS 23.502 §4.13.6.1)と骨格は似ていますが、トリガー・フォールバック先・許容されるUE状態 が異なる、緊急呼専用の手続きです。
Overview — 概要¶
Emergency Services Fallback は、次の流れで動きます。
- 緊急サービス要求を検知 — UEが 緊急サービスを要求(Emergency Service Request、または緊急指示付きの Registration)する。音声呼のQoSフロー確立を待たず、この緊急要求の時点でフォールバック起動の契機になり得る
- RANが緊急呼をNRで提供できないと判断 — このセルは緊急呼を提供できない、と無線側が判断する
- UEを4G/E-UTRAへ移行 — NG-RANがフォールバックを起動し、UEを Handoverベース か Redirectベース で 4G/EPS または 同一5GC配下のE-UTRA へ移す
- 移行先で緊急呼成立 — 移行後、UEは移行先RATでIMS緊急呼(PSAPへ)を確立する(緊急呼そのものの詳細は Emergency章)
ポイントは、EPS Fallback が「音声用QoS Flow(5QI=1)の確立要求」をきっかけにするのに対し、本章は「UEの緊急サービス要求そのもの」をきっかけにする点です。緊急呼は音声QoSフローの確立を待たずに、緊急要求の時点でRANがフォールバックを起動しうる、という違いが本質です。
下の図は、緊急サービス要求を契機に、RANの緊急呼可否判断でフォールバックが起動し、N26の有無で移行方式が分かれる様子を示します。
flowchart TD
START["UE: 緊急サービス要求
(Emergency Service Request /
緊急指示付き Registration)
【EPS Fallbackと違い、音声QoS確立を待たない】"] --> Q1{"NG-RAN:
このセルは NR で緊急呼を提供可能?"}
Q1 -- "可能" --> NR["NR上で緊急呼成立
(VoNR緊急呼。フォールバックしない)"]
Q1 -- "不可" --> EFB["Emergency Services Fallback 起動"]
EFB --> Q2{"N26(AMF⇔MME)
あり?"}
Q2 -- "あり" --> HO["Handoverベース
Inter-RAT Handover
(N26で状態引き継ぎ・滑らか)"]
Q2 -- "なし" --> RD["Redirectベース
RRC Release で E-UTRA へ誘導
(UEが移行先で再接続)"]
HO --> DONE["4G/EPS または E-UTRA で緊急呼成立
IMS緊急呼 → PSAP"]
RD --> DONE
classDef common fill:#eef,stroke:#66a;
classDef ok fill:#efe,stroke:#3a3,stroke-width:2px;
classDef fb fill:#fee,stroke:#c33;
class START common;
class NR ok;
class EFB,HO,RD,DONE fb;
図の読み方
最上部の青いブロックが EPS Fallbackとの最大の違い です。EPS Fallback は「音声用QoS Flow(5QI=1)の確立要求」を待ってから分岐しますが、Emergency Services Fallback は UEの緊急サービス要求そのもの を契機にし、音声QoSフローの確立を待たずに RANがフォールバックを起動しうる点が異なります。最初の菱形で NG-RAN が「このセルはNRで緊急呼を提供できるか」を判断 し、可能なら緑のNR緊急呼成立、不可なら赤い Emergency Services Fallback 起動へ進みます。以降の N26(AMF⇔MME)の有無 による Handover/Redirect の分岐は EPS Fallback と同型です。移行先が 4G/EPS だけでなく E-UTRA にもなり得る(後述)点も EPS Fallback との違いです。
Basic Concept — 初心者向け説明¶
Emergency Services Fallback は 「緊急の依頼が来たら、この窓口で扱えるか確かめる前に、実績ある窓口へ最優先でご案内する」 にたとえられます。
- 一般の EPS Fallback は「音声通話を頼まれ、音声レーン(5QI=1)を敷こうとして『うちでは無理』と分かってから」隣の窓口へ案内する
- 緊急の Emergency Services Fallback は「緊急です、と言われた瞬間に、悠長に音声レーンを敷こうとせず、扱えない窓口ならすぐ実績ある窓口へ案内する」。人命優先だからこそ、待たない
- 案内先は「4Gの窓口(4G/EPS)」だけでなく、同じ建物の別フロアのLTE窓口(同一5GC配下のE-UTRA) の場合もある
- 身分証が確認できないお客(未登録UE/限定サービス状態のUE)でも、緊急のためなら案内する(詳細は Emergency章)
案内の仕方(Handoverベース=手を引いて連れて行く/Redirectベース=住所を教えて行ってもらう)は EPS Fallback と同じ2通りです。
コラム: フォールバック先「4G/EPS」と「E-UTRA」の違い
EPS Fallback の移行先は基本的に 4G/EPC(コアごと4Gへ) です。一方 Emergency Services Fallback では、移行先が次の2通りになり得ます。
- 4G/EPS — コアもEPCへ。既存のVoLTE/IMS緊急呼の枠組みで成立させる(EPS Fallback と同様に N26 で状態を引き継ぐ)
- 同一5GC配下のE-UTRA — NG-RAN内のLTE無線(E-UTRA connected to 5GC)へ移る。コアは5GCのまま、無線だけLTEへ
どちらになるかは、在圏の隣接RAT・ネットワーク設計・実装に依存します(実装依存)。厳密な適用条件は 3GPP TS 23.502 §4.13.4.1 を 要確認。
Architecture¶
graph LR
UE["UE
(未登録/限定サービスでも可)"] -- "N1(NAS: Emergency Service Request)" --> AMF["AMF (5GC)"]
UE -- "無線(NR→LTE/E-UTRA)" --> RAN["NG-RAN"]
AMF -- "N11" --> SMF["SMF (5GC)"]
RAN -- "N2" --> AMF
AMF -- "N26" --> MME["MME (4G/EPC)"]
RAN -. "Inter-RAT移行" .-> ENB["eNB / E-UTRA"]
MME --> ENB
図の読み方: UEが N1(NAS)で AMF に緊急サービスを要求 すると、AMFは N2経由でNG-RANへ緊急サービスのフォールバックが必要である旨を通知 します(トリガーは EPS Fallback のような音声QoS要求ではなく、緊急サービス要求そのもの)。NG-RANが「このセルはNRで緊急呼を提供できない」と判断すると Emergency Services Fallback を起動。N26(AMF⇔MME) があれば状態を引き継いで 4G/EPS へHandover、なければRRC Releaseで E-UTRA へRedirectします。移行後の緊急呼確立(緊急用PDU Session・緊急用P-CSCF・PSAPルーティング)は Emergency章 を参照してください(本章では再掲しません)。
Network Function¶
| NF | 役割 | 保持情報 | 利用API | 提供API | 関連Interface | 障害時の影響 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| NG-RAN | 緊急呼のNR提供可否を判断しフォールバックを起動・移行を実行 | セルの緊急呼提供可否, 隣接RAT情報 | — | — | N2, N3 | 緊急呼を移せず成立しない |
| AMF | 緊急サービス要求を受け、フォールバック要否をRANへ通知。N26でMMEと連携 | UEコンテキスト, 緊急登録状態 | — | Namf_Communication | N1, N2, N11, N26 | 緊急フォールバックを起動できない |
| SMF | 緊急用PDU Session/QoSを扱う(緊急呼の詳細は Emergency章) | 緊急用PDU Session状態 | Npcf_SMPolicyControl | Nsmf_PDUSession | N7, N11, N4 | 緊急用セッション確立不可 |
| MME(4G) | EPC側モビリティ管理。移行先(4G/EPS)でUE/ベアラを扱う | EPSベアラコンテキスト | — | (S1AP/GTP-C) | N26, S1, S11 | 4G側でUEを受けられない |
PCFの役割は Emergency章へ
緊急呼のQoS/優先度(ARP等)を決める PCF の役割は、移行先で緊急呼を確立する局面のものです。本章はあくまで「NRから4G/E-UTRAへ移すまで」に焦点を当てるため、PCF・IMS(緊急用P-CSCF)・PSAPの詳細は Emergency章 に委ねます。
Interface¶
| Interface | 両端 | Transport | Protocol | Port | 利用Procedure |
|---|---|---|---|---|---|
| N1 | UE ⇔ AMF | (NAS over N2) | NAS(5GMM/5GSM) | — | 緊急サービス要求(Emergency Service Request) |
| N2 | NG-RAN ⇔ AMF | SCTP | NGAP | 38412 | 緊急フォールバック要否通知・移行手続きの制御 |
| N26 | AMF ⇔ MME | UDP | GTPv2-C | 2123 | 4G/5G間のモビリティコンテキスト引き継ぎ |
| N11 | AMF ⇔ SMF | TCP | SBI(HTTP/2/TLS) | 実装依存 | 緊急用PDU Session/QoS制御 |
N26のProtocol/Portについて
N26は 4G/EPC側と同系の GTPv2-C を用いるのが一般的で、Portは 2123(GTP-C)とされることが多いですが、正確な規定・実装は 要確認(実装依存)です。N26の詳細は 3GPP TS 23.501/23.502 を参照してください。
Procedure — Call Flow¶
Emergency Services Fallback は、(A) 緊急サービス要求の発生 → (B) NG-RANの緊急呼NR提供不可判断 → (C) 4G/E-UTRAへ移行 → (D) 移行先で緊急呼成立 の4段階で理解します。
sequenceDiagram
participant UE
participant RAN as NG-RAN
participant AMF
participant MME as MME(4G)
participant ENB as eNB / E-UTRA
Note over UE,AMF: (A) UEが緊急サービスを要求(音声QoS確立を待たない)
UE->>AMF: N1 Emergency Service Request / 緊急指示付き Registration
AMF->>RAN: N2 緊急サービス・フォールバック要否を通知
Note over RAN: (B) このセルはNRで緊急呼を提供できないと判断 → フォールバック起動
alt Handoverベース(N26あり/4G/EPSへ)
RAN->>AMF: N2 Handover Required
AMF->>MME: N26 でコンテキスト引き継ぎ
MME->>ENB: 4G側リソース準備
RAN-->>UE: Inter-RAT Handover Command (→LTE)
else Redirectベース(N26なし/E-UTRAへ)
RAN-->>UE: RRC Release (redirect to E-UTRA)
UE->>ENB: E-UTRAで再接続・(必要なら)登録
end
Note over UE,ENB: (C)/(D) 移行先で IMS緊急呼を確立(詳細は Emergency章)
UE->>ENB: 緊急用ベアラで音声(RTP)確立 → PSAP
手順の説明:
- (A) 緊急サービス要求の発生 — UEが 緊急サービスを要求 する(緊急サービスのフォールバックを示す Service Request、または緊急指示付きの Registration)。ここが EPS Fallback との最大の違いで、EPS Fallbackが「音声用QoS Flow(5QI=1)の確立要求」を待つのに対し、本章は緊急要求そのものが契機。音声QoSフローの確立を待たずに 次に進みうる。
NASメッセージ名についての注記
本章では便宜上「Emergency Service Request」と表記する箇所がありますが、NAS(3GPP TS 24.501)上は独立した固有メッセージというより、緊急サービスのフォールバックを示す Service type を持つ Service Request ないし 緊急指示付きの Registration に紐づく挙動として規定されます。正確なメッセージ種別・IE名は版により異なるため TS 24.501 を 要確認。
- (B) 緊急呼NR提供不可判断 — NG-RANが「このセルはNRで緊急呼を提供できない」と判断し、Emergency Services Fallback を起動する。
- (C) 4G/E-UTRAへ移行 — 移行方式は2通り(EPS Fallback と同型)。
- Handoverベース(N26あり) — NG-RANが N2 Handover Required を送り、AMFが N26でMMEへUEコンテキストを引き継ぎ、Inter-RAT HandoverでUEを移す(主に 4G/EPS へ。Handover章 参照)。
- Redirectベース(N26なし) — NG-RANが RRC Release でUEを E-UTRA へリダイレクトし、UEが移行先で再接続する。
- (D) 移行先で緊急呼成立 — 移行先RAT上でUEはIMS緊急呼を確立し、PSAP へつながる。緊急用PDU Session・緊急用P-CSCF・PSAPルーティング・優先度(ARP等)の詳細は Emergency章 を参照。
未登録UE / 限定サービス状態のUEでも許容され得る
緊急呼のためなら、通常サービスを受けられない 未登録UE や 限定サービス状態(Limited Service)のUE でも、フォールバックが許容され得ます。ただし受付可否は国の規制・事業者ポリシー・実装に大きく依存します(規制/実装依存)。緊急登録・認証省略(NIA0/NEA0)の詳細は Emergency章 を参照してください。
Signal Flow¶
| シグナル | 目的 | 送信元 | 送信先 | 主要IE | 結果 |
|---|---|---|---|---|---|
| Emergency Service Request(N1) | 緊急サービスを要求 | UE | AMF | 緊急指示(Emergency) | フォールバックの契機(音声QoS確立を待たない) |
| フォールバック要否通知(N2) | RANへ緊急フォールバックを指示 | AMF | NG-RAN | 緊急サービス指示 | RANが緊急呼NR可否を判断 |
| Handover Required(N2) | 4G/EPSへの移行を要求 | NG-RAN | AMF | 対象セル情報 | N26でのコンテキスト移行を起動 |
| N26 コンテキスト移行 | 4G/5G状態引き継ぎ | AMF | MME | UE/ベアラコンテキスト | 4G側でHandover受入準備 |
| RRC Release(redirect) | UEをE-UTRAへ誘導 | NG-RAN | UE | redirect先(E-UTRA) | UEが移行先で再接続 |
| 緊急呼確立(移行先) | 移行先で緊急呼を成立 | 移行先RAT/コア | UE | 緊急用ベアラ/QoS | IMS緊急呼→PSAP成立 |
Handoverベース と Redirectベース¶
Emergency Services Fallback の移行方式も、EPS Fallback と同じく N26インターフェースの有無 で2つに分かれます。
| 観点 | Handoverベース | Redirectベース |
|---|---|---|
| 前提 | N26あり(AMF⇔MME) | N26なし |
| 移行の仕組み | Inter-RAT Handover(状態引き継ぎ) | RRC ReleaseでE-UTRAへリダイレクト |
| 状態引き継ぎ | あり(コンテキストをN26で移送) | なし(UEが移行先で再接続) |
| 主な移行先 | 4G/EPS(N26でEPCへ) | E-UTRA(再接続で移行先へ) |
| 緊急呼確立までの速さ | 相対的に速い・滑らか | 再接続ぶん遅くなりやすい |
緊急呼では『速さ』がとくに重要
緊急呼は人命に関わるため、フォールバックから緊急呼成立までの遅延を極力抑えたい要求があります。一般に Handoverベース(N26あり)の方が状態引き継ぎで速く滑らかです。ただし在圏の隣接RATやネットワーク設計により、どちらの経路になるか・どのRATへ移るかは変わります(実装依存)。
EPCとの比較¶
- 4Gでは: LTE上の緊急呼は VoLTE/IMS緊急呼(緊急用ベアラ+緊急用P-CSCF→PSAP)で成立させます。4Gには他RATへ落とす CS Fallback の歴史がありましたが、緊急呼をNRから実績あるRATへ移すという発想は、その延長線上にあると理解できます。
- 5Gでは: NRで緊急呼を提供できないセルでUEが緊急サービスを要求すると、Emergency Services Fallback でUEを 4G/EPS または E-UTRA へ移し、移行先で緊急呼を成立させます(TS 23.502 §4.13.4.1)。一般音声の EPS Fallback(§4.13.6.1)と違い、トリガーが緊急サービス要求そのもので、音声QoS確立を待たない点、移行先にE-UTRAも含む点が異なります。
Release差分¶
- Rel-15: 5G初期展開でNR緊急呼(VoNR緊急呼)未提供エリアが多く、Emergency Services Fallback が緊急呼を成立させる実運用上の要として位置づけられた。TS 23.502 §4.13.4.1 に手続きが規定。
- Rel-16以降: NR緊急呼対応の拡充により、将来的には重要度が下がる方向。ただし個別の機能追加・改定は各TSを 要確認(本章では断定しない)。
Trouble Shooting¶
| 症状 | 想定原因 | 確認ポイント | ログ/Packet | 解決方向 |
|---|---|---|---|---|
| 緊急発信で必ず4G/LTEへ移る | セルがNR緊急呼非対応(正常なフォールバック) | RANの緊急呼提供可否 | N2 緊急サービス指示, RANポリシー | NR緊急呼対応セルの拡充で解消 |
| 緊急呼が移れず成立しない | N26未構成 or 移行先E-UTRA不在 | N26設定, 近隣LTE/E-UTRAセル | N2 Handover, RRC Release | N26構成/近隣カバレッジ確認 |
| フォールバックが遅く緊急呼が遅延 | Redirectベースで再接続に時間 | Handover/Redirectのどちらか | RRC Release, 再接続ログ | N26導入でHandoverベース化を検討 |
| 未登録UEの緊急呼が移行前に弾かれる | 緊急サービス受付が無効(規制/実装依存) | AMFの緊急サービス設定 | N1 NAS, AMFログ | ポリシー確認・Emergency章・要確認 |
| 移行先で緊急呼が確立しない | 移行先の緊急用設定不備 | 移行先の緊急用DNN/P-CSCF | SIPトレース, 移行先QoS | Emergency章側の設定・要確認 |
3GPP Specification¶
- 3GPP TS 23.502 §4.13.4.1 — Emergency Services Fallback の手続き(本章の主根拠)
- 3GPP TS 23.502 §4.13.6.1 — EPS Fallback for IMS voice(一般音声。本章はこれとの差分が主題)
- 3GPP TS 23.501 §5.16.4 — 緊急サービス(Emergency Services)の全体像(緊急呼の枠組み。詳細な枝番は 要確認)
- 3GPP TS 23.501 §5.7.4 — 標準化5QI表(移行先で使う音声QoSの識別子。5QI=1 会話音声/GBR 等)
- 3GPP TS 23.501 / 23.502 — 4G/5G Interworking と N26(AMF⇔MME)の規定(詳細な章番号は 要確認)
FAQ¶
Q. Emergency Services Fallback と EPS Fallback は何が違いますか? A. 主に3点です。(1) トリガー — EPS Fallbackは「音声用QoS Flow(5QI=1)の確立要求」を待ちますが、Emergency Services Fallbackは UEの緊急サービス要求そのもの を契機とし、音声QoSフローの確立を待たずに RANがフォールバックを起動しうる。(2) 移行先 — EPS Fallbackは基本 4G/EPC ですが、Emergency Services Fallbackは 4G/EPS だけでなく 同一5GC配下のE-UTRA にもなり得る。(3) UE状態 — 緊急呼のため 未登録UE/限定サービス状態のUE でも許容され得る。根拠は TS 23.502 §4.13.4.1(緊急)と §4.13.6.1(一般音声)。
Q. 何がきっかけでEmergency Services Fallbackは起動しますか? A. UEが 緊急サービスを要求(Emergency Service Request、または緊急指示付きRegistration)し、NG-RANが「このセルはNRで緊急呼を提供できない」と判断したときに起動します。音声QoSフローの確立を待たない点がEPS Fallbackとの違いです。
Q. フォールバック先は必ず4Gですか? A. いいえ。4G/EPS(N26でEPCへ)だけでなく、同一5GC配下のE-UTRA(NG-RAN内のLTE) の場合もあります。どちらになるかは在圏の隣接RAT・ネットワーク設計・実装に依存します(実装依存、詳細は TS 23.502 §4.13.4.1 を 要確認)。
Q. 登録できていないUEでも緊急呼のフォールバックはできますか? A. 緊急呼のため 未登録UE/限定サービス状態のUE でも許容され得ますが、受付可否は国の規制・事業者ポリシー・実装に大きく依存します(規制/実装依存)。緊急登録・認証省略の詳細は Emergency章 を参照してください。
Q. 移行後の緊急呼の確立手順はどこを見ればよいですか? A. 本章は「NRから4G/E-UTRAへ移すまで」に焦点を当てます。移行先での緊急用PDU Session・緊急用P-CSCF・PSAPルーティング・優先度(ARP等)は Emergency章 にまとめています。
Summary¶
- Emergency Services Fallback は、NRで緊急呼を提供できないセルで、UEの緊急サービス要求を契機にUEを 5GS(NR)→4G/EPS または E-UTRA へ移し、移行先でIMS緊急呼を成立させる仕組み(3GPP TS 23.502 §4.13.4.1)
- EPS Fallback(§4.13.6.1)との違いは (1)トリガーが緊急サービス要求そのもの(音声QoS確立を待たない)/(2)移行先に4G/EPSだけでなくE-UTRAも含む/(3)未登録・限定サービスUEでも許容され得る の3点
- 移行方式は Handoverベース(N26あり・状態引き継ぎ) と Redirectベース(N26なし・RRC Releaseで誘導) の2つで、EPS Fallback と同型
- 移行先での緊急呼確立(緊急用PDU Session・緊急用P-CSCF・PSAP・優先度)は Emergency章 に委ねる
- 「速さ」が緊急呼ではとくに重要で、一般にHandoverベースが有利(ただし移行先RATは実装依存)
Practice — 理解度チェック・演習¶
理解度チェック¶
Q1. Emergency Services Fallback と EPS Fallback のトリガーの違いを説明してください。
EPS Fallback は「IMS音声呼で 音声用QoS Flow(5QI=1)の確立要求 が発生し、それをRANが受けて」起動します。一方 Emergency Services Fallback は UEの緊急サービス要求そのもの(Emergency Service Request / 緊急指示付きRegistration)を契機とし、音声QoSフローの確立を待たずに RANがフォールバックを起動しうる点が異なります。
Q2. フォールバック先は EPS Fallback と Emergency Services Fallback でどう違いますか?
EPS Fallback は基本的に 4G/EPC(コアごと4Gへ) です。Emergency Services Fallback は 4G/EPS だけでなく 同一5GC配下のE-UTRA(NG-RAN内のLTE) にもなり得ます。どちらになるかは在圏の隣接RAT・設計・実装に依存します(実装依存、TS 23.502 §4.13.4.1 を要確認)。
Q3. 未登録UEでも緊急呼のフォールバックが許容され得るのはなぜですか?
緊急通報は人命に関わり、多くの国の規制が「通常サービスを受けられないUEでも緊急呼は可能な限り成立させる」ことを求めるためです。ただし受付可否は規制・事業者ポリシー・実装に大きく依存します(規制/実装依存。詳細は Emergency章)。
演習¶
- EPS Fallback と Emergency Services Fallback のCall Flowを並べ、「トリガー」「移行先」「UE状態」の3点がどこで分かれるかを図に描いてみましょう。
- N26あり(4G/EPSへHandover)/なし(E-UTRAへRedirect)の2ケースについて、緊急呼成立までのステップ数と遅延の違いを整理してみましょう。
Next Step¶
- Emergency(緊急通報) — 移行先での緊急呼確立(緊急登録・認証省略・緊急用PDU Session・PSAP)へ進む
- EPS Fallback(一般音声) — 一般音声版のフォールバック。トリガーと移行先の違いを対比して深める
- 4G-5G Interworking(N26 / 相互接続) — フォールバックを支える4G⇔5G相互接続の枠組み
- Handover(ハンドオーバ) — Handoverベースの移行が使うInter-RAT Handoverの詳細