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N1 — UE ⇔ AMF(NAS 参照点)

難易度: 中級 / 想定学習時間: 20分 / 接続点: UE ⇔ AMF / Protocol: NAS / 関連Interface: N2

学習目標

このページを読み終えると、次のことができるようになります。

  • N1がUEとAMFを結ぶ論理インターフェースであることを説明できる。
  • N1が運ぶProtocol(NAS)と、その2つのサブレイヤ(5GMM / 5GSM)を区別できる。
  • 「N1は独自の物理リンクを持たず、N2(NGAP)にカプセル化されて相乗りする」仕組みを図で説明できる。
  • Registrationなどの手続きでN1が果たす役割を説明できる。
  • 4G(EPC)のNAS(UE⇔MME)との対応関係を説明できる。

前提知識

先に以下を理解しておくとスムーズです。

Why — なぜ必要なのか

スマホ(UE)は「ネットワークに登録したい」「セッションを張りたい」といった要求そのものを、途中の基地局に中身を覗かれず、コアネットワークの担当者(AMF)に直接届けたいはずです。無線区間の通信品質やハンドオーバといった「無線の都合」とは切り離し、端末とコアだけが理解する会話の道が必要です。

この「UEとコア(AMF)の間だけで完結する会話路」がN1です。基地局(gNB)は無線の中継役に徹し、N1で運ばれるNASの中身(登録要求や認証応答)を原則そのまま透過します。N1が無ければ、UEはコアと直接対話できず、登録も認証もセッション確立も始められません。

Overview — 概要

N1は UE ⇔ AMF を結ぶ論理インターフェースで、上を流れるProtocolは NAS(Non-Access Stratum) です。NASは目的別に2つのサブレイヤに分かれます。

サブレイヤ 正式名 役割 主なメッセージ例
5GMM 5G Mobility Management 登録・認証・接続・モビリティ管理 Registration Request, Authentication Request
5GSM 5G Session Management PDUセッションの確立・変更・解放 PDU Session Establishment Request

重要な特徴は、N1が独自の物理リンクを持たないことです。N1のNASメッセージは、UE⇔gNB間は無線(RRC)で、gNB⇔AMF間はN2(NGAP)の中にNAS-PDUとして詰められて運ばれます。

Basic Concept — 初心者向け説明

N1を手紙のやり取りに例えます。

あなた(UE)が役所(AMF)に申請書(NASメッセージ)を送るとします。あなたは封筒の中身(申請内容)を、途中の郵便局(gNB)に読まれず役所に届けたい。郵便局は封筒を運ぶだけで、中身は開けません。

  • 手紙の中身が N1(NAS)= UEと役所だけが読む。
  • 手紙を運ぶ郵便網が N2 や無線 = 中身には関与しない配送路。

つまりN1は「専用の道路」ではなく「郵便局(N2)のトラックに相乗りする封筒」です。この「N1はN2に相乗りする」という点が、5GCを理解するうえで最初の関門です。

Protocol / Transport

項目 内容
Protocol NAS(Non-Access Stratum)/サブレイヤ 5GMM・5GSM
下位Transport 独自リンクなし(論理IF)。UE⇔gNBは無線RRC、gNB⇔AMFはN2(NGAP)のNAS-PDUとしてカプセル化
ポート N1固有のポートは無し(N2=SCTP 38412 に相乗り)
セキュリティ NAS暗号化・完全性保護。NAS securityはUE⇔AMFで終端(gNBは関与しない)
特徴 論理インターフェース。中身はUEとAMFのみが解釈。gNBは透過リレー

N1は「論理」インターフェース

N1という物理ケーブルは存在しません。N1は「UEとAMFの間に成立するNASの会話」という論理的な参照点です。実際のビットはN2(NGAP)と無線(RRC)に乗って運ばれます。

プロトコルスタック(NAS は区間ごとに別の器へ相乗り)

同じ NAS メッセージが、区間によって違う下位プロトコルに内包されて運ばれます。UE⇔gNB は無線(RRC)、gNB⇔AMF は N2(NGAP) の NAS-PDU です。gNB は NAS の中身を開かず、そのまま載せ替えるだけ(透過リレー)です。

flowchart LR
    subgraph UEside["UE"]
        direction TB
        U_NAS["NAS
(5GMM / 5GSM)"] U_RRC["RRC"] U_L2["PDCP/RLC/MAC/PHY
(無線)"] U_NAS --- U_RRC --- U_L2 end subgraph gNBside["gNB(透過リレー:NAS中身は開かない)"] direction TB G_TOP["(NASを載せ替えるだけ)"] G_RRC["RRC ⇔ NGAP
変換"] G_TOP --- G_RRC end subgraph AMFside["AMF"] direction TB A_NAS["NAS
(5GMM / 5GSM)"] A_NGAP["NGAP(NAS-PDU で内包)"] A_SCTP["SCTP / IP"] A_NAS --- A_NGAP --- A_SCTP end U_L2 == "Uu(無線)" === G_RRC G_RRC == "N2(NGAP / SCTP:38412)" === A_SCTP U_NAS -. "N1:論理的に同じNASが通じる" .- A_NAS classDef nas fill:#eef,stroke:#66f,stroke-width:2px; class U_NAS,A_NAS nas;

図の読み方

青枠の NAS は UE と AMF の両端にだけ存在し(=N1 の論理的な会話)、点線がその「論理的に同じ NAS が通じる」関係を示します。実体のビットは、UE⇔gNB は RRC(さらに PDCP/RLC/MAC/PHY の無線レイヤ)に、gNB⇔AMF は NGAP の NAS-PDU(SCTP:38412 上)に内包されて運ばれます。gNB は NAS の中身を解釈せず、RRC と NGAP の間で載せ替えるだけです。だから NAS セキュリティ(暗号化・完全性)も UE⇔AMF で終端し、gNB は関与しません。

Architecture

N1(NAS)が誰と誰を結び、下位のどのIFに相乗りするかを示します。

flowchart LR
  UE(("UE"))
  gNB["gNB (基地局)"]
  AMF["AMF"]

  UE == "N1 (NAS) =論理的な会話" ==> AMF
  UE -- "無線 RRC が運搬" --> gNB
  gNB -- "N2 (NGAP) の NAS-PDU が運搬" --> AMF

  classDef logical fill:#eef,stroke:#66f,stroke-width:2px;

図の読み方: 太い線(==>)がN1の論理的な会話(UE⇔AMFで意味が通じる)。細い線が実際の運搬経路です。NASの中身はgNBで開かれず、無線とN2を経由してAMFまで透過されます。

利用Procedure

N1(NAS)は、UEとコアが直接対話するほぼ全ての手続きで使われます。

  • Registration(登録): Registration Request/Accept/Complete を運ぶ。UEがネットワークに登録する起点。
  • Authentication(認証): Authentication Request/Response、Security Mode Command/Complete を運ぶ。
  • Service Request: アイドル状態のUEが接続を再確立する際のNAS要求。
  • PDU Session Establishment(5GSM): セッション確立要求を運ぶ(AMFがSMFへリレー)。

Registrationにおける役割は特に中心的で、UEの最初のNAS(Registration Request)がN1として送出され、gNBがN2の Initial UE Message に載せてAMFへ届けます。詳しい流れは Registration を参照してください。

主なMessage

N1を流れる代表的なNASメッセージです。

メッセージ サブレイヤ 用途
Registration Request / Accept / Complete 5GMM 登録手続き
Authentication Request / Response 5GMM 本人確認(チャレンジ・レスポンス)
Security Mode Command / Complete 5GMM NASセキュリティの起動
Service Request 5GMM 接続の再確立
PDU Session Establishment Request 5GSM セッション確立要求

各メッセージの詳細は Message辞典 を参照してください。

Packet Analysis (Wireshark)

N1(NAS)はキャプチャ上に単独では現れず、NGAP(N2)パケット内のNAS-PDUとしてデコードされます。

目的 Display Filter
NAS 5GS メッセージを抽出 nas-5gs
登録要求だけを抽出 nas-5gs.mm.message_type == 0x41(Registration Request。0x41 は確定, TS 24.501 Table 9.7.1)
NGAP経由で見る ngap && nas-5gs

Decodeの見どころ:

  • WiresharkはNGAPの NAS-PDU フィールドを自動で nas-5gs として二段デコードします。「NGAPの中にNASが入れ子」という構造を意識して見ると理解が進みます。
  • Security Mode Command以降のNASは暗号化され、中身が見えなくなる点も確認できます(完全性保護のMACは付与)。
  • 厳密には、Security Mode Command 自身は完全性保護のみで暗号化されません(integrity protected but not ciphered)。暗号化が有効になるのは、DL方向はSecurity Mode Command直後のメッセージから、UL方向はSecurity Mode Complete以降です(TS 33.501 §6 / TS 24.501 §4.4)。

EPCとの比較

  • 4Gでは: NAS は UE ⇔ MME 間で終端し、EMM(モビリティ管理)とESM(セッション管理)に分かれていました(TS 24.301)。運搬はS1AP(S1-MME)の NAS-PDU。
  • 5Gでは: NAS は UE ⇔ AMF で終端し、5GMM / 5GSM に再編されました(TS 24.501)。運搬はNGAP(N2)の NAS-PDU。
4G (EPC) 5G (5GC)
NAS(UE⇔MME, TS 24.301) NAS(UE⇔AMF, TS 24.501)
EMM / ESM 5GMM / 5GSM
S1AP が NAS-PDU を運搬 NGAP(N2) が NAS-PDU を運搬

3GPP Specification

  • 3GPP TS 24.501 — 5GシステムのNASプロトコル(5GMM / 5GSM)。個別章番号は要確認
  • 3GPP TS 23.501 §4 — システムアーキテクチャと参照点(N1の定義)
  • 3GPP TS 33.501 — NASセキュリティ(暗号化・完全性保護)。個別章番号は要確認

Summary

  • N1は UE ⇔ AMF を結ぶ論理インターフェースで、ProtocolはNAS
  • NASは 5GMM(モビリティ管理)5GSM(セッション管理) の2サブレイヤ。
  • N1は独自リンクを持たず、UE⇔gNBは無線、gNB⇔AMFはN2(NGAP)のNAS-PDUに相乗りする。
  • NASセキュリティ(暗号化・完全性保護)はUE⇔AMFで終端。
  • 4GのNAS(UE⇔MME, TS 24.301)に相当し、5Gでは5GMM/5GSMに再編。

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