NWDAF — Network Data Analytics Function¶
学習目標¶
このページを読み終えると、次のことができるようになります。
- NWDAFが5GCで果たす役割(データの収集・分析・予測(Analytics) の提供)を一言で説明できる。
- Analytics ID の考え方(分析の種別=負荷予測・異常検知・スライス負荷・UE挙動・QoS維持予測等を識別する鍵)を説明できる。
- 消費者NF(AMF/SMF/PCF等)がNWDAFのAnalyticsをどう利用し、自動最適化・閉ループ制御につなげるかを説明できる。
- NWDAFが Rel-16で本格化した5G新規機能であり、4G(EPC)には標準的な相当機能が無い点を説明できる。
前提知識¶
先に以下を理解しておくとスムーズです。
- SBA(Service Based Architecture)とSBIの基礎 → カリキュラム
- SBI(Nnwdaf 等のサービスベースInterface)の考え方 → Interface辞典
- 関連NF(AMF/SMF/PCF/NSSF 等、データ源かつ消費者)の役割 → NF辞典
この章で学べること¶
まずWhy(NWDAFが無いと何が困るか)から入り、What(データ収集→分析→Analytics提供の流れ、Analytics ID、役割・API)を表とMermaid図で整理し、最後にHow(Procedureでの登場、EPC比較、参照Spec)へ進みます。
Why — なぜ必要なのか¶
5GCは多数のNFが連携する大規模で複雑なシステムです。トラフィックの増減、スライスごとの負荷、UEの移動、輻輳や異常の兆候などを、人手で監視して都度最適化するのは限界があります。とくに「これから混みそうだから先回りして資源を割り当てる」といった予測に基づく制御は、勘や事後対応では実現できません。
そこで、ネットワーク各所からデータを収集し、統計・予測(必要に応じて機械学習)で分析・予測(Analytics) を生成し、それを制御を担うNFへ提供する標準機能が必要になります。これがNWDAF(Network Data Analytics Function)です。NWDAFがあることで、負荷予測・異常検知・スライス負荷・UE挙動・QoS維持予測といった洞察をNFが受け取り、自動最適化・閉ループ制御(データ→分析→制御→再測定のループ)を回せるようになります。
例え話: NWDAFは、ネットワークの データアナリスト/気象予報士です。各部署(NF/OAM)から日々のデータを集め、「明日はこのエリアが混みます」「この設備に異常の兆候があります」と予報を出します。NWDAFが無いと、各NFは今起きていることにしか反応できず、予測に基づく先回りの制御ができません。
Overview — 概要¶
NWDAF(Network Data Analytics Function)は、5GCにおけるデータ分析・予測の中枢です。動作は大きく3段階です。
- データ収集 … 各NF(AMF/SMF/PCF/NSSF 等)や OAM(運用管理)から、イベント通知やメトリクスを収集する。
- 分析(Analytics) … 収集データを統計処理・予測し、必要に応じて機械学習(MLモデル) を用いて洞察を生成する。
- Analytics提供 … 生成した分析・予測結果を、消費者NF(AMF/SMF/PCF等)へ提供する。
どの種別の分析かは Analytics ID で識別します(例: ネットワーク負荷、スライス負荷、UE挙動/移動、異常検知、QoS維持など。個別のID体系は要確認)。提供の形態は、その都度要求する要求(Request)型と、条件を登録しておいて更新のたびに通知を受ける購読(Subscribe/Notify)型があります。
NWDAFは4G(EPC)には標準的な相当機能が無く、SBA上で標準化された分析機能=5G新規(Rel-16で本格化)という位置づけです。
Basic Concept — 初心者向け説明¶
NWDAFは、社内の データアナリストだと考えてください。各部署(NF/OAM)から売上や来客数のような「データ」を集め、過去の傾向から未来を予測し、「来週この店舗は混みそうです」「この機械は故障しそうです」と関係部署へ助言します。
- 集める: 各部署からデータをもらう(データ収集)。
- 分析する: 過去データから傾向を読み、未来を予測する(Analytics、必要ならMLモデルを使う)。
- 助言する: 予測結果を、実際に動く部署(消費者NF)へ渡す(Analytics提供)。
助言の「種類」を表すラベルが Analytics ID です。「負荷予測」「異常検知」「スライスの混み具合」など、どの分析かをこのIDで指定します。受け取り方は、その都度たずねる(Request)ことも、先に登録して更新があれば知らせてもらう(Subscribe/Notify)こともできます。
Network Function 詳細¶
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 役割 | ネットワークデータの収集・分析・予測(Analytics) を行い、Analytics IDごとの洞察を消費者NF(AMF/SMF/PCF等)へ提供。自動最適化・閉ループ制御を支える |
| 保持情報 | 収集データ、学習モデル(MLモデル)、Analytics結果、サブスクリプション(購読)情報 |
| 利用する主なAPI(他NFへ呼ぶ) | 各NFの Event Exposure(Namf_EventExposure, Nsmf_EventExposure 等)でのデータ収集、NRFでのNF Discovery(Nnrf)、OAMからのデータ取得(OAMインターフェースは実装/構成依存) |
| 提供するAPI(自分が公開) | Nnwdaf_AnalyticsInfo(Request=要求型でのAnalytics取得)、Nnwdaf_EventsSubscription(Subscribe/Notify=購読・通知型)、Rel-17で MLModelProvision 等(TS 29.520)。個別のサービス範囲は要確認 |
| 関連Interface | SBI(Nnwdaf) |
| 障害時の影響 | 分析ベースの最適化・予測制御が停止する。ただし各NFの基本通信(登録・セッション等)は既定動作で継続でき、影響は最適化機能に限定される(構成依存) |
Architecture¶
NWDAFは各NF/OAMからデータを収集し、分析・予測結果を消費者NF(PCF/AMF/SMF等)へ提供する、データ分析のハブとして機能します。
flowchart LR
AMF["AMF"]
SMF["SMF"]
PCF["PCF"]
NSSF["NSSF"]
OAM["OAM (運用管理)"]
NWDAF["NWDAF (分析・予測)"]
AMF -- "データ収集 (Event Exposure)" --> NWDAF
SMF -- "データ収集 (Event Exposure)" --> NWDAF
NSSF -- "スライス関連データ" --> NWDAF
OAM -- "メトリクス収集" --> NWDAF
NWDAF -- "Analytics提供 (Nnwdaf)" --> PCF
NWDAF -- "Analytics提供 (Nnwdaf)" --> AMF
NWDAF -- "Analytics提供 (Nnwdaf)" --> SMF
図の読み方: NWDAFは AMF/SMF/NSSF などのNFや OAM から Event Exposure やメトリクスとしてデータを収集し(左向きの流入)、分析・予測した結果を Analytics ID 単位で消費者NF(PCF/AMF/SMF 等)へ Nnwdaf で提供します(右向きの流出)。同じNFがデータ源にも消費者にもなり得る点が特徴で、これにより「測定→分析→制御→再測定」の閉ループが成立します。
Interface¶
NWDAFが持つ主なInterfaceと役割です。
| Interface | 両端 | 役割 |
|---|---|---|
| SBI(Nnwdaf) | NF ⇔ NWDAF | 各NF/OAMからのデータ収集、および分析・予測結果(Analytics)の提供 |
SBI(HTTP/2 + JSON over TLS)およびNnwdaf の詳細は Interface辞典 を参照してください。
Procedure での登場¶
NWDAFは、登録やPDU Session確立といった基本手続きそのものの内部ではなく、その外側の最適化・運用の文脈で登場します。基本手続きは NWDAF が無くても成立し、NWDAF の Analytics は制御をより賢くするために使われます。
- PCF が NWDAF のスライス負荷分析を参照し、ポリシー(QoS/課金/経路選択)を負荷状況に応じて調整する。
- AMF が UE の移動予測(UE挙動 Analytics) を利用し、モビリティ管理やページング戦略を先回りで最適化する。
- SMF が負荷予測を参照し、セッション/資源配分を調整する。
これらは応用シナリオであり、具体的な連携タイミング・IE・Analytics IDの詳細は要確認です。ポリシー面は PCF を、Analyticsの外部(サードパーティ)公開の観点は NEF を参照してください。
EPCとの比較¶
- 4Gでは: 標準的な相当機能が存在しません。 ネットワークの分析・最適化は OAM や事業者/ベンダー独自の分析基盤(監視・KPI集計・手動チューニング等)に依存していました。標準NFとしての「分析機能」は定義されていません。
- 5Gでは: NWDAF がSBA上で標準化された分析機能として定義され、各NFがSBI(Nnwdaf)で分析・予測を利用できます。データ駆動の自動最適化・閉ループ制御を、標準の枠組みで実現できるようになりました。
| 4G (EPC) | 5G (5GC) |
|---|---|
| (標準相当なし。OAM/独自分析基盤に依存) | NWDAF(Nnwdaf) |
Release差分¶
- Rel-15: NWDAFの概念導入(分析機能という枠組みの提示)。
- Rel-16: NWDAFの本格定義。複数の Analytics ID(ネットワーク負荷、スライス負荷、UE挙動、異常検知 等)とデータ収集・提供の枠組みを規定。
- Rel-17: MLモデル提供(MLModelProvision 等)、分析精度の向上、分散NWDAF(データ収集と分析の分離・集約と推論の分離)等の拡張。具体項目・章番号は要確認。
3GPP Specification¶
- 3GPP TS 23.501 §6.2.18 — NWDAF の機能定義(Network Function としての役割)
- 3GPP TS 23.288 — Analytics の詳細(Analytics ID、データ収集・分析の手続き)。個別章番号は要確認
- 3GPP TS 29.520 — Nnwdaf サービス(AnalyticsInfo、EventsSubscription 等)。個別章番号は要確認
注記(要確認): 上記の対応は一般的な整理ですが、Analytics ID の具体的な体系や各サービスの細目・章番号は Release により差異があるため、個別には要確認とします。SBIは HTTP/2 + JSON over TLS で実装されます。
Summary¶
- NWDAFは5GCのデータ分析・予測(Analytics)の中枢で、各NF/OAMからデータを収集し、消費者NFへ分析・予測結果を提供する。
- どの分析かは Analytics ID で識別する(負荷予測・異常検知・スライス負荷・UE挙動・QoS維持予測 等)。提供は要求(Request)型と購読(Subscribe/Notify)型がある。
- 消費者NF(AMF/SMF/PCF等)がAnalyticsを利用し、自動最適化・閉ループ制御(測定→分析→制御→再測定)を回せる。
- 提供APIは Nnwdaf_AnalyticsInfo / Nnwdaf_EventsSubscription、Rel-17で MLModelProvision 等(TS 29.520)。
- NWDAFは Rel-16で本格化した5G新規機能で、4G(EPC)には標準的な相当機能が無い(OAM/独自分析基盤に依存)。
Next Step¶
- PCF — NWDAFのスライス負荷分析等を参照してポリシーを調整する消費者NF
- NEF — Analyticsを外部(サードパーティ)へ公開する際の窓口
- NF辞典 — AMF/SMF/NSSF 等、データ源かつ消費者となるNFの確認
- Interface辞典 — SBI(Nnwdaf)の確認