Charging — 5GCの課金(Converged Charging)¶
学習目標¶
この章を読み終えると、次のことができるようになります。
- Charging(課金) が「利用量・時間・サービスに応じて料金を計算・記録する仕組み」であることを説明できる
- オンライン課金(残高・与信・Quota割当)と オフライン課金(利用実績記録・CDR生成)の違いを説明できる
- Converged Charging(オンライン/オフラインを1つのNF=CHFで統合)という5Gの特徴を説明できる
- 課金の主なトリガ源が SMF であり、N40(Nchf_ConvergedCharging) を通じてCHFへ要求する流れを図示できる
- 4GのOCS/OFCS(Gy/Rf)から5GのConverged Chargingへの進化を説明できる
前提知識¶
- PDU Session(PDUセッション確立) — 課金は主にPDU Sessionのデータ利用に対して発生する
- QoS(5G QoSモデル) — 課金は QoS Flow / Rating Group 単位で計量されることがある
- 補助: CHF(課金NFの詳細) / SMF(主な課金トリガ源) / N40(SMF⇔CHFの参照点詳細)
この章の焦点
CHFというNF自体の詳細は CHFページ、N40参照点のメッセージ詳細は N40ページ にあります。この章はそれらを踏まえ、「課金という手続きが5GC全体でどう流れるか」 に焦点を当てます。
Why — なぜ課金の仕組みが必要か¶
通信事業者は、加入者の利用量・利用時間・利用サービスに応じて料金を請求します。ここには2つの異なる要求があります。
- 前払い(プリペイド) — 使う前に残高を確認し、残高の範囲内でだけ通信を許す(与信)。残高が尽きたら止める。
- 後払い(ポストペイド) — 使った実績を正確に記録し、後でまとめて請求する。
この2つは動作タイミングが違います。前払いは 通信中にリアルタイムで残高を管理 する必要があり、後払いは 利用実績を漏れなく記録 できればよい。5GCでは、この双方を CHF(Charging Function) が中心となって担います。
例え話: 課金は「料金メーター+会計係」です。どれだけ使ったかを計測し(メーター)、前払いなら残高が足りるか確認して使わせ、後払いなら帳簿に記録します(会計係)。
What — オンライン課金・オフライン課金・Converged Charging¶
課金には大きく2種類あります。
| 種類 | いつ効く | 何をする | 4Gでの担当 |
|---|---|---|---|
| オンライン課金 (Online Charging) |
通信中(リアルタイム) | 残高を確認し、使ってよい分(Quota)を前もって割り当てる。使い切ったら再要求、尽きたら遮断(与信) | OCS(Gy/Ro) |
| オフライン課金 (Offline Charging) |
通信後(実績ベース) | 利用実績を記録し、課金レコード(CDR: Charging Data Record)を生成する | OFCS(Gz/Rf) |
5Gでは、この2つを 別々のシステムではなく1つのNF(CHF)で統合的に処理 します。これを Converged Charging(統合課金) と呼びます(TS 32.240、TS 32.255)。
Quota(クォータ)とは
オンライン課金で、CHFがSMFへ「この分までは使ってよい」と前もって割り当てる利用可能量(例: 100MB、10分)です。SMFはQuotaの範囲で通信を通し、使い切る前にCHFへ次のQuotaを要求します。これにより、毎バイトごとにCHFへ問い合わせる必要がなくなります。
オンラインとオフラインの共存¶
同じPDU Sessionに対し、オンライン課金(与信)とオフライン課金(記録)が 同時に働くこともあります。Converged Chargingでは、SMFが1つのN40要求で両方の情報をCHFへ渡し、CHFが内部で振り分けます。
How — 課金はどこで起きるか(Architecture)¶
課金の主なトリガ源は SMF です。SMFはPDU Sessionのデータ利用量を(UPFの計量結果を通じて)把握し、N40でCHFへ課金要求を出します。
graph LR
UE[UE] --- RAN[NG-RAN]
RAN --- UPF[UPF
利用量を計量]
UPF -->|計量報告| SMF[SMF
課金トリガ源]
SMF -->|N40 Nchf| CHF[CHF
Converged Charging]
PCF[PCF] -->|N7 課金ポリシー| SMF
CHF -->|CDR| BS[課金システム
Billing Domain]
CHF -->|残高照会| BAL[残高管理
Account Balance]
各Network Functionの役割¶
| NF | 課金での役割 |
|---|---|
| UPF | ユーザプレーンのパケットを計量(Usage Reporting)。SMFへ利用量を報告する |
| SMF | 課金の主トリガ源。UPFの計量結果を集約し、N40でCHFへ課金要求を出す。Quotaを受け取りUPFへ計量ルールを設定 |
| CHF | Converged Charging本体。オンライン(残高/Quota)とオフライン(CDR生成)を統合処理 |
| PCF | 課金ポリシー(どのRating Groupで課金するか等)をN7でSMFへ指示 |
主なInterface¶
| Interface | 区間 | 役割 |
|---|---|---|
| N40 (Nchf) | SMF ⇔ CHF | 課金要求。Nchf_ConvergedCharging(TS 32.290)。オンライン/オフライン統合 |
| N7 (Npcf) | SMF ⇔ PCF | 課金ポリシー(Charging Control)をPCCルールとして配布(TS 29.512) |
| N4 (PFCP) | SMF ⇔ UPF | 計量ルール(URR: Usage Reporting Rule)の設定と利用量報告 |
Rating Group(レーティンググループ)
課金を分類する単位です。例えば「動画は高レート、SNSは低レート、特定アプリはゼロレーティング(無料)」のように、トラフィックをグループ分けして別々に計量・課金します。PCFがどのトラフィックをどのRating Groupに割り当てるかを決めます。
Procedure — 課金のCall Flow¶
オンライン課金(Quotaベース)の典型的な流れです。
sequenceDiagram
participant UPF
participant SMF
participant CHF
Note over SMF,CHF: (1) PDU Session確立時: 初期課金要求
SMF->>CHF: N40 ConvergedCharging_Create
(課金開始・Quota要求)
CHF->>CHF: 残高確認・与信判定
CHF-->>SMF: Quota付与 (例: 100MB)
SMF->>UPF: N4 URR設定
(100MBで報告するよう計量指示)
Note over UPF: (2) 通信中: 計量
UPF->>UPF: パケットを計量
UPF->>SMF: N4 Usage Report
(Quota消費: 100MB到達)
Note over SMF,CHF: (3) Quota枯渇前: 追加要求
SMF->>CHF: N40 ConvergedCharging_Update
(消費報告 + 次Quota要求)
CHF->>CHF: 残高減算・再与信
CHF-->>SMF: 次Quota付与 or 拒否
Note over SMF,CHF: (4) セッション終了時
SMF->>CHF: N40 ConvergedCharging_Release
(最終消費報告)
CHF->>CHF: 最終精算・CDR生成
CHF-->>SMF: 完了応答
Signal Flow(主要メッセージ)¶
| # | メッセージ | 区間 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 1 | Nchf_ConvergedCharging_Create | SMF→CHF | 課金開始。初期Quota要求 |
| 2 | (応答) Quota付与 | CHF→SMF | 与信OK。利用可能量を割当 |
| 3 | N4 URR / Usage Report | SMF⇔UPF | 計量ルール設定と消費報告 |
| 4 | Nchf_ConvergedCharging_Update | SMF→CHF | 消費報告+次Quota要求(通信中に繰り返す) |
| 5 | Nchf_ConvergedCharging_Release | SMF→CHF | セッション終了。最終精算・CDR生成 |
与信拒否(残高不足)時
オンライン課金でCHFが次Quotaを拒否した場合(残高不足など)、SMFはPDU Sessionを解放するか、特定の扱い(例: 課金画面へのリダイレクト)を行います。この挙動は事業者ポリシー・実装依存です。
EPC(4G)との比較¶
| 項目 | 4G EPC | 5GC |
|---|---|---|
| オンライン課金 | OCS(Online Charging System)、Gy/Ro参照点 | CHF(Converged) |
| オフライン課金 | OFCS(Offline Charging System)、Gz/Rf参照点 | CHF(Converged) |
| 統合の有無 | オンライン/オフラインが別システム | 1つのNF(CHF)に統合=Converged Charging |
| 主トリガ源 | PGW(PCEF) | SMF |
| プロトコル | Diameter(Gy/Rf) | SBI(HTTP/2, Nchf) |
5Gの最大の変化は、別々だったOCS/OFCSがCHFという1つのNFに統合され、SBI(HTTP/2)ベースになった点です。
Release差分¶
| Release | 変更点 |
|---|---|
| Rel-15 | Converged Charging(CHF)導入。Nchf_ConvergedCharging(TS 32.290) |
| Rel-16以降 | スライス単位課金、イベント単位課金(Nchf_SpendingLimitControl等)の拡充 |
Spending Limit Control
PCFがCHFへ「加入者の利用が一定額(Spending Limit)に達したか」を問い合わせる仕組みもあります(Nchf_SpendingLimitControl)。これによりPCFは「上限到達後は速度制限」などのポリシーを発動できます。詳細は要確認(TS 32.240系)。
Trouble Shooting¶
| 症状 | 疑う箇所 | 確認ポイント |
|---|---|---|
| 通信できるが課金されない | オフライン課金のURR未設定 | SMFがUPFへ計量ルール(URR)を設定しているか。CDRが生成されているか |
| 残高があるのに接続拒否 | オンライン課金の与信失敗 | CHFの残高照会経路。N40応答でQuota拒否になっていないか |
| Quota枯渇で頻繁に切断 | Quotaサイズが小さすぎ | CHFの割当Quota量、SMFの再要求タイミング |
| ゼロレーティングが効かない | Rating Group割当ミス | PCFのPCCルール、対象トラフィックのRating Group |
3GPP Specification¶
| 仕様 | 内容 |
|---|---|
| TS 32.240 | Charging architecture and principles(課金の全体アーキテクチャ) |
| TS 32.255 | 5G data connectivity domain charging(5Gデータ接続の課金) |
| TS 32.290 | 5G system; Services, operations and procedures of charging using SBI(Nchf) |
章番号の粒度
上記TS番号は課金領域の主要仕様として確実です。各TS内の詳細な節番号(具体的なメッセージ定義位置等)は版により異なるため、精密な引用時は要確認。
FAQ¶
Q. オンライン課金とオフライン課金は排他ですか?
いいえ。同じPDU Sessionに対して両方が同時に働くこともあります。Converged ChargingではCHFが1つのNFで両方を扱います。
Q. 課金はSMFだけがトリガするのですか?
データ接続の課金は主にSMFがトリガします。ただしSMS課金など他のトリガ源もあり、それぞれ対応するNFがCHFへ要求します。この章はデータ接続(PDU Session)課金に焦点を当てています。
Q. CDRとは何ですか?
Charging Data Record(課金データレコード)。オフライン課金で生成される利用実績の記録です。後で課金システムが集計し請求に使います。
Summary¶
- Charging(課金) は利用量・時間・サービスに応じて料金を計算・記録する仕組み
- オンライン課金=残高/Quota/与信(リアルタイム)、オフライン課金=利用実績記録/CDR生成(実績ベース)
- 5Gは両者を CHF に統合=Converged Charging(4GのOCS/OFCS統合)
- 主トリガ源は SMF、N40(Nchf_ConvergedCharging) でCHFへ要求
- UPFが計量、SMFが集約、CHFが与信・精算・CDR生成
理解度チェック¶
Q1. オンライン課金とオフライン課金の違いを、動作タイミングの観点で説明してください。
オンライン課金は通信中にリアルタイムで残高を確認しQuotaを割り当てる(与信)。オフライン課金は通信後に利用実績を記録しCDRを生成する。前者は残高が尽きれば遮断でき、後者は記録が主目的。
Q2. Converged Chargingとは何か、4Gと比較して説明してください。
オンライン課金とオフライン課金を1つのNF(CHF)に統合する5Gの方式。4Gでは OCS(Gy/Ro)と OFCS(Gz/Rf)が別システムだったが、5GではCHFがSBI(Nchf)で両方を統合的に処理する。
Q3. 課金の主なトリガ源はどのNFで、どのInterfaceでCHFへ要求しますか?
主トリガ源はSMF。N40(Nchf_ConvergedCharging) を通じてCHFへ課金要求を出す。UPFの計量結果をSMFが集約して要求に反映する。
Next Step¶
- 課金と密接に連携するPolicy(ポリシー制御 / PCF)へ
- 課金NFの詳細はCHF、参照点詳細はN40へ
- 課金の計量元となるQoS(5G QoSモデル)を復習