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Network Function(NF)総論

難易度: 初級〜中級 / 想定学習時間: 25分 / 前提: 5GC概要とSBA

学習目標

この章を読み終えると、次のことができるようになります。

  • Network Function(NF) が「機能をソフトウェア部品として切り分けた単位」であることを説明できる
  • なぜ 5GC が機能を NFに分ける のか(スケール・独立更新・ベンダ混在)を説明できる
  • NFを 制御プレーン系 / データ管理系 / ユーザプレーン / 公開・分析系 に分類できる
  • 主要16NF(AMF, SMF, UPF … AF)の役割を1行で言え、個別ページへたどれる
  • NFインスタンス / NFサービス / discovery(NRF) の関係を直感的に説明できる

前提知識

  • 5GC概要とSBA — SBA(Service Based Architecture)・SBI・NRF の初出解説。本章はこれを前提に「NFの側から」見ます

この章で学べること

  • Why — なぜ機能を一体的なノードではなく NF に分けるのか
  • Overview — NFという単位と分類の地図
  • Basic Concept — 会社の部署分担にたとえる
  • 本論 — NFとは / 分類の地図 / 主要NF一望表 / NFインスタンスとサービスとdiscovery
  • EPCとの比較 — 一体的ノード(LTE)→ 細分化NF(5GC)
  • 各NFの深い解説は個別ページ(例: AMF)と NF辞典 に委ねます

Why — なぜ機能をNFに分けるのか

5GC の役割は「端末を認証し、セッションを張り、データを運び、ポリシーや課金を適用する」ことです。これらを 1つの巨大なノード に詰め込むこともできますが、現代の要求には合いません。そこで 5GC は、機能を Network Function(NF) という独立したソフトウェア部品に切り分けました。分ける理由は主に3つです。

  • スケール(拡張性) — 混み合う機能だけを増やせる。例えば登録処理(AMF)が逼迫したら AMF だけを増設でき、データ転送(UPF)はそのままにできる
  • 独立更新 — ある機能を直しても他に波及しにくい。認証ロジック(AUSF/UDM)だけを更新し、他NFを止めずに済む
  • ベンダ混在(マルチベンダ) — NF間のやり取りが標準化された SBI で行われるため、AMF はA社・SMF はB社、のように組み合わせられる

つまりNFは「機能ごとに部品化して、必要なところだけ増減・更新・入れ替えできるようにする」ための単位です。この部品化を支えるのが SBA(Service Based Architecture)であり、詳細は 5GC概要とSBA を参照してください。

Overview — 概要

5GC は多数の NF が協調して動くシステムです。本章では次の順に「地図」を描きます。

  • NFとは — 機能をソフト部品として分けた単位。実体は物理装置というより、仮想化基盤の上で動くソフトウェア
  • 分類 — NFは役割から大きく4系統に分けて捉えると見通しがよい(制御プレーン系 / データ管理系 / ユーザプレーン / 公開・分析系)
  • 主要NF一望表 — 16NFを「役割1行+個別ページリンク」で俯瞰
  • NFインスタンス / NFサービス / discovery — NFが複数実体(インスタンス)を持ち、機能を サービス として公開し、互いを NRF で見つけ合う

この章の立ち位置

本章は「地図」に徹します。各NFの提供API・関連Interface・Spec章番号まで持つ精密版は NF辞典、参照点やプロトコルは Interface / Protocol 総論 に委ねます。

Basic Concept — 初心者向け説明

会社の部署分担にたとえる

5GC を1つの 会社 だと思ってください。会社は仕事を「部署」に分けます。

  • 受付・総合窓口(AMF)— 来客(端末)の応対と、社内の担当部署への取り次ぎ
  • 契約・回線手配(SMF)— どの回線をどう引くかを手配し、現場(UPF)に指示
  • 配送現場(UPF)— 実際に荷物(ユーザデータ)を運ぶ
  • 人事・名簿管理(UDM/UDR)— 誰が社員(加入者)かを管理
  • 警備・本人確認(AUSF)— 入館者が本人かを確かめる
  • 社内規則(PCF)— どこまで許すか(QoS・課金・アクセス)のルール
  • 社内電話帳(NRF)— どの部署に頼めばよいかを引く名簿

もし全部の仕事を1人(1つの巨大ノード)にやらせると、受付が混んだだけで会社全体が止まります。部署(NF)に分けておけば、混んだ部署だけ増員でき、ある部署のやり方を変えても他部署は動き続け部署ごとに別の外注先(ベンダ)を使えます。これが 5GC を NF に分ける発想です。部署どうしのやり取りの作法が標準化(SBI)されているから、混在が成り立ちます。

NFとは — 機能を切り分けた単位

Network Function(NF) とは、5GC の機能を独立したソフトウェア部品として切り分けた単位です。3GPP は NF を TS 23.501 §6.2 系で定義しています。要点は次の通りです。

  • NFは「役割(機能)」の単位であり、物理装置と1対1とは限らない。仮想化・クラウド基盤の上で複数の実体として動くことが一般的
  • NF間のやり取りは、SBA では SBI(Service Based Interface) を通じた サービス の呼び出しで行われる(HTTP/2 + JSON ベース)
  • NFは自分の機能を NFサービス として公開し、他NFはそれを 消費(consume) する。誰が誰を呼ぶかは固定配線ではなく、NRF を通じて動的に見つけ合う

NF=箱ではなく役割

「AMFという1台の装置がある」と考えるより、「AMFという役割を担うソフトウェアが、必要な数だけ動いている」と捉える方が 5GC の実態に近いです。この“実体”を NFインスタンス と呼びます(後述)。

分類の地図 — NFを4系統で捉える

16のNFを一度に覚えるのは大変です。まず役割から 4系統 に束ねると見通しがよくなります。

graph TD
    NF["Network Function(NF)"]
    NF --> CP["制御プレーン系
(つなぐ・張る・選ぶ)"] NF --> DM["データ管理系
(加入者/データを持つ)"] NF --> UP["ユーザプレーン
(データを運ぶ)"] NF --> EA["公開・分析・補助系
(外部連携/分析/課金)"] CP --> CP1["AMF / SMF / AUSF
PCF / NRF / NSSF"] DM --> DM1["UDM / UDR"] UP --> UP1["UPF"] EA --> EA1["NEF / NWDAF / CHF
BSF / SMSF / SEPP / AF"]

図の読み方: これは「役割の似たものを束ねた地図」であり、3GPP が定めた公式分類ではありません(暗記の足場です)。実際には PCF はポリシー、NRF は発見、NSSF はスライス選択…と役割が異なるため、束ねた中身は下の一望表で1行ずつ確認してください。

  • 制御プレーン系 — 端末をつなぎ、セッションを張り、認証し、ポリシーを決め、どのNFに頼むかを選ぶ(AMF / SMF / AUSF / PCF / NRF / NSSF)
  • データ管理系 — 加入者情報やポリシーデータを保持する(UDM / UDR)
  • ユーザプレーン — 実データを転送する唯一のNF(UPF)
  • 公開・分析・補助系 — 外部との仲介、分析、課金、結合情報、SMS、PLMN間保護、アプリ連携(NEF / NWDAF / CHF / BSF / SMSF / SEPP / AF)

主要NF一望表 — 16NFを俯瞰する

各NFの役割を1行で示し、深掘りは個別ページへリンクします。役割の言い回しは NF辞典 と整合させています。提供API・関連Interface・Spec章番号まで引きたいときは辞典へ。

NF 正式名(略) 役割(1行) 個別ページ 分類
AMF Access and Mobility Management Function N1・N2終端、登録・接続・モビリティ管理 AMF 制御プレーン系
SMF Session Management Function PDUセッション管理、UPF制御(N4) SMF 制御プレーン系
AUSF Authentication Server Function 認証(5G-AKA / EAP-AKA')サーバ AUSF 制御プレーン系
PCF Policy Control Function ポリシー制御(QoS・課金・アクセス制御ルール) PCF 制御プレーン系
NRF Network Repository Function NFの登録・発見(Discovery)・選択支援 NRF 制御プレーン系
NSSF Network Slice Selection Function ネットワークスライス選択支援(NSSAI解決) NSSF 制御プレーン系
UDM Unified Data Management 加入者データ管理・認証情報生成 UDM データ管理系
UDR Unified Data Repository 加入者・ポリシー等のデータ格納リポジトリ UDR データ管理系
UPF User Plane Function ユーザプレーン処理(パケット転送・QoS適用・課金計測) UPF ユーザプレーン
NEF Network Exposure Function 外部AFへの能力公開・情報仲介 NEF 公開・分析・補助系
NWDAF Network Data Analytics Function ネットワークデータ分析・予測 NWDAF 公開・分析・補助系
CHF Charging Function 課金(オンライン/オフライン)機能 CHF 公開・分析・補助系
BSF Binding Support Function セッションとPCFの結合(Binding)情報管理 BSF 公開・分析・補助系
SMSF Short Message Service Function NAS経由のSMS配送機能 SMSF 公開・分析・補助系
SEPP Security Edge Protection Proxy PLMN間SBIシグナリングのエッジ保護(N32) SEPP 公開・分析・補助系
AF Application Function アプリ側機能(NEF経由またはPCF直結で連携) AF 公開・分析・補助系

分類はあくまで学習用の足場

上表の「分類」列は本章の学習用の束ね方です。3GPP が §6.2 に定める公式カテゴリではありません。役割・提供API・関連Interfaceの厳密な定義は各個別ページと NF辞典 を正とします。

NFインスタンス / NFサービス / discovery

NFを実運用の視点で見ると、3つの言葉が要になります。

NFインスタンス — NFの“実体”

NFインスタンス(NF Instance) は、あるNF(役割)を実際に動かしている個々の実体です。1つのNF種別が複数のインスタンスを持てます(例: 負荷分散のためAMFインスタンスを3つ動かす)。各インスタンスは一意な NF Instance ID を持ち、NRFに登録されます。

NFサービス — NFが公開する機能の単位

NFサービス(NF Service) は、NFが SBI 経由で他NFに提供する機能の単位です。1つのNFが複数のサービスを提供します。例えば AMF は Namf_CommunicationNamf_EventExposure といったサービスを公開します(サービス名の一覧は NF辞典 参照)。他NFはこれを 消費(consume) して機能を使います。

discovery — NRFで互いを見つける

NF同士は固定配線ではなく、NRF(Network Repository Function) を通じて動的に相手を探します。この流れを直感で押さえます。

sequenceDiagram
    participant SMF as NFインスタンス(例: SMF)
    participant NRF as NRF
    participant AMF as NFインスタンス(例: AMF)

    Note over AMF,NRF: 起動時
    AMF->>NRF: NF Register(自分のprofileを登録)
    Note over SMF,NRF: 相手が必要になったとき
    SMF->>NRF: NF Discovery(条件に合うAMFを問い合わせ)
    NRF-->>SMF: 該当するAMFインスタンスの情報を返す
    SMF->>AMF: SBIでサービスを呼び出す
  • 登録(Register) — 各NFインスタンスは起動時に、自分の情報を NF profile として NRF に登録する
  • 発見(Discovery) — あるNFが相手を必要としたとき、条件(NF種別・スライス・地域など)を指定して NRF に問い合わせ、該当インスタンスを教えてもらう
  • 選択(Selection) — 返ってきた候補から、実際に呼ぶインスタンスを選ぶ

NF profile とは

NF profile は、NRF に登録される「そのNFインスタンスの自己紹介カード」です。NF種別・NF Instance ID・提供するNFサービス・対応スライス(S-NSSAI)・接続先アドレスなどを含みます。Discovery はこの profile を条件で絞り込む仕組みだと捉えると分かりやすいです。NRF・SBA そのものの詳細は 5GC概要とSBA を参照してください。

EPCとの比較 — 一体的ノードから細分化NFへ

5GC の NF 分割の意義は、LTE のコア網 EPC(Evolved Packet Core) と対で見ると分かりやすくなります。

観点 EPC(LTE) 5GC
機能の単位 MME / SGW / PGW など、機能が比較的一体的なノード 機能を細かく分けた多数のNF
ノード間IF 各IFが個別プロトコル(GTP-C, Diameter 等)で固定的 SBI で統一(HTTP/2)、動的に discover
制御とユーザ面 PGW等で制御と転送が結びつきがち SMF(制御)と UPF(転送)を明確に分離(CUPS の発展)
拡張・更新 ノード単位でまとまって増減 NF単位で個別にスケール・更新・ベンダ混在

例えば LTE の PGW が担っていた「セッション制御+ユーザデータ転送」は、5GC では SMF(制御)UPF(転送) に分かれました。制御と転送を分けたことで、転送だけを端末に近い場所(エッジ)に置く、といった柔軟な配置ができます。EPCと5GCのより詳しい対応は Interface / Protocol 総論 や各個別ページを参照してください。

3GPP Specification

  • NF の定義 — TS 23.501 §6.2 系(5G System Architecture)。各NFの機能記述が §6.2.x に置かれる(例: AMF=§6.2.1, SMF=§6.2.2, UPF=§6.2.3, UDM=§6.2.7, AUSF=§6.2.8, NRF=§6.2.6)。番号は NF辞典 と一致させています
  • 注記CHF は TS 23.501 §6.2 に独立節を持たず(定義は課金系 TS 32.290 等)、BSF も §6.2 に節がなく TS 23.503(PCC framework)で定義されます。個別の§6.2.x番号を引くときは辞典の値を正としてください
  • SBA・SBI・discovery 手続きの詳細な仕様は 5GC概要とSBA および関連Specへ

章番号の扱い

本章では基幹NFの §6.2.x を辞典と整合する範囲でのみ示しています。自信の持てない番号は本文に書かず、NF辞典 の該当行を参照してください(辞典は ETSI 公開版 Rel-17 で裏取りされた値を持ちます)。

FAQ

Q. NFは物理的な装置ですか? それともソフトウェアですか? A. 実運用ではソフトウェアとして捉えるのが実態に近いです。NFは「役割」の単位で、仮想化・クラウド基盤の上で複数の NFインスタンス として動きます。物理装置と1対1ではありません。

Q. NFが16個もあって覚えられません。 A. まず4系統(制御プレーン系 / データ管理系 / ユーザプレーン / 公開・分析系)に束ね、代表格(AMF, SMF, UPF, UDM, PCF, NRF)から押さえるのがおすすめです。残りは必要になったとき一望表と個別ページで確認すれば十分です。

Q. NF同士はどうやって相手を見つけるのですか? A. NRF に問い合わせます。各NFは起動時に自分の NF profile を NRF へ登録し、相手が必要なNFは条件を指定して NRF に discover を依頼し、該当インスタンスを教えてもらいます。

Q. 「NFインスタンス」と「NFサービス」はどう違いますか? A. NFインスタンスは「そのNFを動かしている実体(1個・2個…と数えられる)」、NFサービスは「そのNFが SBI で公開する機能の単位(Namf_Communication など)」です。1つのインスタンスが複数のサービスを提供します。

Q. この分類は3GPPの公式カテゴリですか? A. いいえ。本章の4系統分類・一望表の「分類」列は学習用の足場です。3GPP の定義(TS 23.501 §6.2)を正とし、厳密な役割は NF辞典 と個別ページで確認してください。

Summary

  • NF(Network Function) は 5GC の機能をソフト部品として切り分けた単位(TS 23.501 §6.2 系で定義)
  • NFに分ける理由は スケール・独立更新・ベンダ混在。これを支えるのが SBA / SBI
  • NFは学習上 制御プレーン系 / データ管理系 / ユーザプレーン / 公開・分析系 の4系統で捉えると見通しがよい
  • 主要16NF(AMF〜AF)は役割1行+個別ページで俯瞰し、詳細は NF辞典 と個別ページへ
  • NFは複数の NFインスタンス として動き、機能を NFサービス として公開し、NRF を通じて互いを discover する
  • EPCの一体的ノードに比べ、5GCは機能をNFに細分化し、制御(SMF)と転送(UPF)も分離した

Practice — 理解度チェック・演習

理解度チェック

Q1. 5GC が機能をNFに分ける主な理由を3つ挙げてください。

スケール(混んだ機能だけ増やせる)独立更新(ある機能を直しても他に波及しにくい)ベンダ混在(NFごとに別ベンダを組み合わせられる) の3つです。これを支えるのが SBI による標準化されたやり取りです。

Q2. 「NFインスタンス」と「NFサービス」の違いを一言で述べてください。

NFインスタンスは「NFを動かしている実体(数えられる)」、NFサービスは「NFが SBI で公開する機能の単位(Namf_Communication 等)」です。1インスタンスが複数サービスを提供します。

Q3. NFが相手のNFを見つけるとき、何に問い合わせますか?

NRF(Network Repository Function) です。各NFは起動時に自分の NF profile を登録し、相手が必要なNFは条件を指定して discover を依頼します。

Q4. LTEのPGWが担っていた機能は、5GCではどのNFに分かれましたか?

セッション制御を担う SMF と、ユーザデータ転送を担う UPF に分かれました。制御と転送の分離により柔軟な配置が可能になります。

演習

  • 一望表の16NFを、見ずに4系統へ振り分けてみましょう。詰まったら表の「分類」列で答え合わせを。
  • 会社の部署分担のたとえを使って、家族に「なぜ5GCは機能をNFに分けるのか」を1分で説明してみましょう。
  • 気になったNFを1つ選び、その個別ページ(例: AMF)を開いて、役割1行がどこまで具体化されているか確かめてみましょう。

Next Step