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NWDAF — 5GCのデータ分析(Network Data Analytics)

難易度: 中級 / 想定学習時間: 20分 / 前提: 5GC概要・SBA(Service Based Architecture)の理解 / 主役: NWDAF / 主Interface: Nnwdaf

学習目標

この章を読み終えると、次のことができるようになります。

  • NWDAF(Network Data Analytics Function) が「ネットワークのデータを分析し、その結果(Analytics)を他NFへ提供するNF」であることを説明できる
  • NWDAFが 他NF/OAMからデータを収集分析他NFへ結果を提供 するという営みの流れを図示できる
  • 分析の種類を識別する Analytics ID の概念と代表例(スライス負荷・QoS Sustainability等)を挙げられる
  • 他NFが Nnwdaf(TS 23.288)を通じて分析結果を Subscribe/Request する関係を説明できる
  • Rel-17/18で導入された MTLF/AnLF(ML学習と分析の論理分割)の考え方を概観できる

前提知識

  • 5GC概要 — 5GCの全体像とNFの役割分担
  • SBA(Service Based Architecture)の理解 — NFがサービス(Nxxx)を公開し、他NFが Subscribe/Request する枠組み
  • 補助: NWDAF(NF詳細) / 分析結果を使う代表的なNF: PCF, AMF, SMF

この章の焦点

NWDAFというNF自体のカタログ的詳細(サービス一覧・配備形態など)は NWDAFページ にあります。スライスの一般説明は Network Slicing にあります。この章はそれらを踏まえ、「Analytics(データ分析)という営みが5GCで何をするか」 の概念に焦点を当てます。


Why — なぜネットワークにデータ分析が必要か

5GCは多数のNFが連携し、スライス・多様なサービス・膨大なUEを扱います。ネットワークを賢く運用するには、「いま何が起きているか」「これから何が起きそうか」を知る必要があります。

  • 現状把握 — どのスライスが混んでいるか、どのNFの負荷が高いか
  • 予測 — このQoSは今後も維持できそうか、UEはどこへ移動しそうか
  • 異常検知 — 通常と違う挙動(攻撃・故障の兆候)がないか

こうした「傾向・予測・異常」の情報があれば、各NFはより良い意思決定ができます。例えばPCFが「このスライスは今後QoSを維持できない」と分かれば、事前にポリシーを調整できます。この 分析(Analytics)を専門に担うNFNWDAF です。

例え話: NWDAFは「ネットワークの分析官(アナリスト)」です。各部署(他NF)や現場(OAM)からデータを集め、傾向をまとめ、将来を予測し、意思決定者(他NF)に「こうなりそうです」というレポートを渡します。分析官自身は運用を実行しませんが、その助言が運用の質を左右します。


What — Analytics と Nnwdaf

NWDAFが提供するのは Analytics(分析結果) です。他NFは「この分析が欲しい」と要求し、NWDAFが結果を返します。この情報のやり取りを規定するサービスベースIFが Nnwdaf で、仕様は TS 23.288(Architecture enhancements for 5G System to support network data analytics services)にまとまっています。

Analytics ID — 分析の種類を指す名前

「どの分析が欲しいか」は Analytics ID で識別します。代表例を数個だけ挙げます(網羅ではありません)。

Analytics ID(代表例) 何を分析するか 主な利用先の例
Slice Load Level ネットワークスライスの負荷レベル NSSF, PCF
NF Load 個々のNFの負荷状況 各NF, OAM
UE Mobility UEの移動性(どこへ動きそうか) AMF, SMF
UE Communication UEの通信パターン(いつ・どれだけ通信するか) SMF, PCF
QoS Sustainability QoSが今後も維持できるかの予測 PCF
Abnormal Behaviour 異常な挙動の検知 PCF, AMF

Analytics IDは他にも多数

ここに挙げたのは代表例です。実際のAnalytics IDはこの他にも多数あり、正確な一覧・各IDの入出力パラメータは TS 23.288 を参照してください。個別Analytics IDの詳細な仕様値は要確認です。

Subscribe と Request

他NFがNWDAFへ分析を求める方法は大きく2つです。

  • Subscribe(購読) — 「この分析を継続的に通知してほしい」。条件が変わるたびNWDAFが結果を届ける(Notify)。
  • Request(要求) — 「いま一度だけこの分析が欲しい」。NWDAFが1回だけ結果を返す。

負荷やQoSのように状況が変わり続けるものは Subscribe、単発の判断材料が欲しいときは Request、と使い分けます。


How — データ収集から分析提供までの流れ(Architecture)

NWDAFは、他NFやOAMからデータを収集し、分析を行い、結果を他NFへ提供します。中心にNWDAFを置いた全体像は次のとおりです。

graph LR
    subgraph 収集元["データ収集元"]
        AMF_S[AMF]
        SMF_S[SMF]
        OTHER[他NF]
        OAM[OAM
運用監視] end subgraph 提供先["分析結果の提供先"] PCF_D[PCF] AMF_D[AMF] SMF_D[SMF] NSSF_D[NSSF等] end 収集元 -->|データ収集| NWDAF[NWDAF
データ分析] NWDAF -->|Nnwdaf
Analytics提供| 提供先

流れを言葉にすると次のとおりです。

  1. 収集 — NWDAFがAMF/SMF等の他NFやOAMからデータ(負荷・イベント・統計)を集める。
  2. 分析 — 集めたデータをAnalytics IDに応じて処理し、傾向・予測・異常を導く。
  3. 提供 — 結果を Subscribe/Request した他NF(PCF等)へ Nnwdaf で返す。

使い道の例: PCFが QoS Sustainability の分析をNWDAFへSubscribeしておくとします。NWDAFが「あるエリアのQoSは今後維持できない見込み」と通知すると、PCFはそれを判断材料に、事前にポリシーを調整(例: ビットレート抑制やスライス側の対応)できます。分析官(NWDAF)のレポートを見て、意思決定者(PCF)が動くわけです。

データ収集元の調整(DCCF)

多くのNWDAFや消費者が同じデータを求めると収集が重複します。これを調整する DCCF(Data Collection Coordination Function) が関わる場合があります。ただし本章では概念として触れるにとどめ、正確な役割・配置は要確認とします(TS 23.288系)。


MTLF と AnLF — 分析とML学習の役割分割

NWDAFは Rel-16 で導入されました。当初は「データを分析して結果を出す」機能が中心でしたが、Rel-17/18 で機械学習(ML)モデルを扱う枠組みへと拡張されました。

その中で、NWDAFの内部機能を論理的に2つに分ける考え方が導入されています。

論理機能 役割(概念)
MTLF(Model Training Logical Function) MLモデルを 学習・提供 する側
AnLF(Analytics Logical Function) 学習済みモデルを使って 分析(Analytics)を推論・提供 する側

イメージとしては、MTLFが「モデルを作る工房」、AnLFが「そのモデルを使って予測を出す分析窓口」です。この分割により、モデルの学習と分析提供を別々にスケール・配備できるようになります。

分割の詳細は概念どまり

MTLF/AnLFの正確な定義位置・提供サービス・相互作用の詳細は版により異なるため、精密な引用時は TS 23.288 で要確認としてください。本章では「学習(MTLF)」と「分析提供(AnLF)」に役割が分かれた、という概念の把握で十分です。


3GPP Specification

仕様 内容
TS 23.288 Architecture enhancements for 5G System (5GS) to support network data analytics services(NWDAF/Analytics/Nnwdaf)

参照の粒度

NWDAF・Analytics・Nnwdaf・MTLF/AnLF・DCCFはいずれも TS 23.288 に規定されます(Rel-16導入は確実)。ただしTS内の詳細な節番号、個別Analytics IDの仕様値、MTLF/AnLF/DCCFの正確な定義位置は版により異なるため要確認です。仕様に無い挙動・事業者裁量の部分は実装依存です。


FAQ

Q. NWDAFは自分でネットワークを制御するのですか?

いいえ。NWDAFは 分析結果(Analytics)を提供する のが役割で、制御そのものは行いません。結果を受け取ったPCF等の他NFが、それを判断材料に制御・ポリシー決定を行います。NWDAFは「分析官」、制御は「意思決定者(他NF)」の役目です。

Q. Analytics IDはどれだけ種類がありますか?

本章で挙げたスライス負荷・NF負荷・UE移動性・UE通信パターン・QoS Sustainability・異常挙動検知は代表例で、実際にはこの他にも多数あります。完全な一覧と各IDの入出力は TS 23.288 を参照してください。


Summary

  • NWDAF は5GCで データ分析(Analytics) を専門に担うNF
  • 他NF/OAMからデータを収集分析他NF(PCF等)へ結果を提供 する
  • 提供IFは Nnwdaf(TS 23.288)。他NFは Subscribe/Request で分析を求める
  • 分析の種類は Analytics ID で識別(スライス負荷・QoS Sustainability・異常挙動検知など、他にも多数)
  • Rel-16 で導入。Rel-17/18 でMLへ拡張し、学習(MTLF)と分析提供(AnLF)に役割分割
  • 例え話では「ネットワークの分析官」。傾向・予測・異常を出し、他NFの意思決定を助ける

理解度チェック

Q1. NWDAFの役割を、データの流れ(収集・分析・提供)の観点で説明してください。

NWDAFは他NFやOAMから データを収集 し、Analytics IDに応じて 分析(傾向・予測・異常の導出)を行い、その 結果(Analytics)をNnwdaf経由で他NFへ提供 する。NWDAF自身は制御せず、結果を受け取った他NF(PCF等)が意思決定に使う。

Q2. Analytics IDとは何か、代表例を1つ挙げて説明してください。

Analytics IDは「どの分析が欲しいか」を識別する名前。例えば QoS Sustainability は、あるエリア/条件でQoSを今後も維持できるかを予測する分析で、主にPCFがポリシー調整の判断材料に使う。代表例は他にスライス負荷・NF負荷・UE移動性・異常挙動検知などがあり、全体は TS 23.288 参照。

Q3. MTLFとAnLFの違いを概念レベルで説明してください。

Rel-17/18でNWDAF内部を論理分割した考え方。MTLF(Model Training Logical Function) はMLモデルを学習・提供する側、AnLF(Analytics Logical Function) は学習済みモデルを使って分析を推論・提供する側。学習と分析提供を分けることで別々にスケール・配備できる。詳細は TS 23.288 で要確認。


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