N20 — AMF ⇔ SMSF(SMS over NAS)¶
学習目標¶
このページを読み終えると、次のことができるようになります。
- N20が SMS over NAS(制御プレーンNAS経由のショートメッセージ配送) の中核となる SBI(Service Based Interface) であることを説明できる。
- UEのSMSが NAS(N1)でAMFへ届き→AMFがN20でSMSFへ中継→SMSFが上位SMSインフラへ橋渡し する流れを説明できる。
- N20の実体がSMSFの提供するサービス Nsmsf_SMService(TS 29.540) であることを説明できる。
- 「参照点N20」と「サービスNsmsf_SMService」が同じものの2つの見方であることを説明できる。
- 4G(EPC)の SGs(MME⇔MSC)/ SGd(SMS配送) との対応関係を説明できる。
前提知識¶
先に以下を理解しておくとスムーズです。
- SBA / SBI と HTTP/2・TLS の位置づけ → Protocol辞典
- N20の両端のNF → AMF / SMSF
- NAS(N1)がUE⇔AMF間の制御プレーンシグナリングであること → N1
- SMSFがUDMへ登録・SMS加入を確認する連携 → N21
- Interfaceと参照点の考え方 → Interface辞典
Why — なぜ必要なのか¶
5GのパケットコアはIPパケット通信を前提に設計されていますが、SMS(ショートメッセージ) は依然として重要なサービスです。ところがSMSは元来、パケットデータではなく制御プレーンのシグナリングで運ばれる文化を持っています。5Gでも、専用のSMS用ユーザプレーンを新設せず、制御プレーンのNAS(N1)にSMSを載せて運ぶ方式(SMS over NAS)が採られました。
このとき、UEのSMSはまず N1(NAS) で AMF に届きます。しかしAMFはあくまでアクセス・モビリティ管理の担当で、SMSそのものを処理・配送する役ではありません。そこでSMSを専門に扱う SMSF(SMS Function) が必要になり、AMFがSMSFへSMSを中継する道が要ります。これがN20です。N20が無ければ、AMFがNASで受け取ったSMSをSMSFへ渡す手段が無く、SMS over NASは成立しません。
例え話: N20は、受付(AMF)から郵便局(SMSF)への社内便です。利用者は受付に手紙(SMS)を渡し、受付は自分で配達せず郵便局へ回送します。郵便局が外部の配送網(上位SMSインフラ)へ橋渡しします。
Overview — 概要¶
N20は AMF ⇔ SMSF を結ぶ参照点です。N20はSBI(Service Based Interface)である点が、N2(NGAP/SCTP)やN4(PFCP/UDP)と決定的に異なります。SBIとはNF同士がWeb API(HTTP)でサービスを呼び合う仕組みで、共通の転送として HTTP/2 + JSON(RESTful)over TLS を用います。
N20の実体は、SMSFが提供するサービス Nsmsf_SMService(TS 29.540) です。UEのSMSは N1(NAS) でAMFに届き、AMFはこのサービスを呼び出して N20でSMSFへSMSを中継します。SMSFは加入者のSMS対応を N21 で UDM に確認・登録しつつ、上位のSMSインフラ(SMS-GMSC / IP-SM-GW / SMS-SC 等、本ページの範囲外)へ橋渡しします。
参照点N20とサービスNsmsf_SMServiceは同じものの2つの見方
3GPPのアーキテクチャ図では 参照点として N20(AMF⇔SMSF) が示されますが、SBA(サービス化)ではこれが実体として SMSFのサービス Nsmsf_SMService として実装されます。つまり「N20」と「Nsmsf_SMService」は、同じAMF⇔SMSF間の連携を、参照点の視点/サービスの視点で見たものです。どちらも指しているものは同一で、呼び方(視点)が違うだけ、と捉えてください。
Basic Concept — 初心者向け説明¶
N20を、受付から郵便局への社内便に例えます。
あなたのスマホがSMSを送ると、そのSMSはデータ通信(土管)ではなく、制御プレーンのNAS(N1) に載って AMF に届きます。AMFは会社の受付のような存在で、SMSそのものを配達はしません。受付は「これはSMS専門部署の仕事だ」と判断し、郵便局にあたる SMSF へSMSを回送します。この回送の道がN20です。SMSFは外部のSMS配送網へ橋渡しし、宛先へ届けます。
逆向き(下り)も同じ経路の折り返しです。外部から届いたSMSはSMSFが受け取り、N20でAMFへ渡し、AMFがNAS(N1)でUEへ配送します。
このAMFからSMSFへの回送は、専用の電話回線(N2やN4のような専用プロトコル)ではなく、社内Webシステム(HTTP)でリクエストを投げて回答をもらうイメージです。これが SBI(Service Based Interface)=NF同士がWeb API(HTTP/2)で会話する仕組みです。要求も応答も、人間に読みやすい JSON という書式でやり取りされます。
Protocol / Transport¶
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Protocol | HTTP/2 + JSON(RESTful)— SBI(Service Based Interface)の共通スタック |
| サービス | Nsmsf_SMService(SMSFが提供)— TS 29.540 |
| SBI framework | TS 29.500 / TS 29.501 系(SBIの共通規約・OpenAPI定義) |
| 下位Transport | TCP、TLS で保護(機密性・完全性・認証)— TS 33.501 |
| ポート | SBIの待受ポートは実装依存(NRF登録のエンドポイントで解決)。特定番号は断定しない |
| 特徴 | 専用L4プロトコルではなくWeb技術ベース。HTTPメソッド(POST/PUT/DELETE)+リソースURIで操作。RESTful |
N20はSBI、SMSを運ぶNASはN1側
N20はAMF⇔SMSF間のSBI(HTTP/2 over TLS)です。一方、SMSそのものをUE⇔AMF間で運ぶのは N1(NAS) であり、こちらはSBIではありません。SMS over NASでは「UE⇔AMFはNAS(N1)、AMF⇔SMSFはSBI(N20)」と役割が分かれます。N20の解析にNAS/N1固有の観点をそのまま持ち込まないよう注意してください。
Architecture¶
N20がAMFとSMSFを結び、SMSはUEからN1(NAS)でAMFに届き、SMSFがN21でUDMと、さらに外部SMS網とも連携する文脈を示します。
flowchart LR
UE["UE"]
AMF["AMF"]
SMSF["SMSF"]
UDM[("UDM")]
SMSC["SMS-GMSC / IP-SM-GW (範囲外)"]
UE -. "N1 (NAS: SMS)" .- AMF
AMF == "N20 (Nsmsf: SMService)" ==> SMSF
SMSF -. "N21" .- UDM
SMSF -. "外部SMS網" .- SMSC
classDef ctrl fill:#efe,stroke:#3a3,stroke-width:2px;
class AMF,SMSF ctrl;
図の読み方: UEのSMSは点線のN1(NAS)でAMFへ届きます。AMFは太い線(==>)のN20でSMSFへSMSを中継します(SBI/HTTP2)。SMSFはN21でUDMと連携してSMS加入を確認・登録し、外部のSMS網(SMS-GMSC / IP-SM-GW 等、範囲外)へ橋渡しします。N20は「AMF⇔SMSFの中継」、N1は「UE⇔AMFのSMS搬送」という役割分担に注目してください。
利用Procedure¶
N20は、UEの登録やSMS送受信のライフサイクルの中で、AMFがSMSFへSMSを中継する際に使われます。
- SMS有効化(Activation): UE登録時などに、SMSFが加入者のSMS対応を N21 で UDM に確認し、当該UEのSMSFとして登録する。以降、そのUEのSMSはこのSMSFが扱う。
- 上りSMS(Mobile Originated): UE → NAS(N1) → AMF → N20 → SMSF → 外部SMS網、の順にSMSが運ばれる。
- 下りSMS(Mobile Terminated): 外部SMS網 → SMSF → N20 → AMF → NAS(N1) → UE、と折り返しでSMSが届く。
これらの手順の細部(メッセージシーケンス、条件、IE、正確なオペレーション名)は要確認です。SMS対応の有無・SMSF選択の条件は構成・Releaseに依存します。
主なMessage¶
N20はSBIなので、メッセージはHTTPメソッド + リソース操作の形を取ります(NGAPのようなprocedureCodeではなくRESTful操作)。代表的なサービスオペレーション(名称は要確認の例示)は次のとおりです。
| サービスオペレーション(要確認) | 用途 |
|---|---|
| Nsmsf_SMService_Activate(要確認) | UEのSMSサービス有効化・SMSF登録 |
| Nsmsf_SMService_Deactivate(要確認) | UEのSMSサービス無効化・登録解除 |
| Nsmsf_SMService_UplinkSMS(要確認) | 上り(MO)SMSをAMF→SMSFへ中継 |
| Nsmsf_SMService_DownlinkSMS(要確認) | 下り(MT)SMSをSMSF→AMFへ配送 |
オペレーション名・方向は要確認です: 上表のオペレーション名(Activate/Deactivate/UplinkSMS/DownlinkSMS)は理解のための例示であり、正確な名称・メソッド・リソースURI・呼び出し方向はTS 29.540のOpenAPI定義に従います。厳密な割り当ては要確認とします。各メッセージの詳細は Message辞典 を参照してください。
Packet Analysis (Wireshark)¶
N20はSBIなので、キャプチャ上は HTTP/2 として観測されます(NGAP/SCTPのようなL4専用プロトコルは現れません)。SMS本体を運ぶNAS部分はN1側で別途観測される点に注意してください。
| 目的 | Display Filter |
|---|---|
| HTTP/2メッセージを抽出 | http2 |
| ヘッダのパスで絞る(概念) | http2.headers.path(:path に nsmsf-sms を含む。値は要確認) |
| JSONボディを見る | json(復号後) |
Decodeの見どころ:
- N20は TLSで暗号化されます。中身(HTTP/2ヘッダやJSONボディ)を見るには復号鍵(TLSセッションキー等)が必要です。鍵が無ければ
tlsの暗号化ペイロードとしてしか見えません。 - 復号できれば、HTTP/2の ヘッダ(
:method、:pathに.../nsmsf-sms/...を含むリソースパス。パス値は要確認)でオペレーションを識別できます。 - ボディは JSON(SMS配送に関する制御情報)で、人間に読みやすい構造で入っています。
- SMSの中身そのもの(NAS上のSMSペイロード)は N1(NAS)側で運ばれるため、N20のキャプチャだけでは完結しません。N1側の観察と合わせて見る必要があります。
EPCとの比較¶
- 4Gでは: SMSはパケット網とは別に、SGs(MME ⇔ MSC) でCS(回線交換)網のMSCと連携し、SGd(SMS配送用) でSMSの配送を行っていました(Diameter / MAP 系のシグナリング)。つまりSMSはMSC/CS網を経由する形が残っていました。
- 5Gでは: SMSを専門に扱う SMSF が導入され、SMS over NAS として制御プレーンのNASにSMSを載せ、AMF⇔SMSF間を N20(Nsmsf_SMService) で SBI化して連携します。4GのSGs/SGdが担っていたSMSの取り回しを、5GではSMSF + N20が担います。
| 4G (EPC) | 5G (5GC) |
|---|---|
| SGs(MME ⇔ MSC)+ SGd(SMS配送) | N20(AMF ⇔ SMSF) |
| Diameter / MAP 系(専用シグナリング) | SBI: HTTP/2 + JSON over TLS |
| —(従来IFに個別規定) | TS 29.540(Nsmsf_SMService) |
| MSC / CS網経由 | SMSF(制御プレーンNAS + SBIで完結) |
注記(要確認): 4GのSGs/SGd経由のSMSが、5Gで SMSF + N20 に置き換わるという対応関係は概念整理です。SGs/SGdとN20の厳密なマッピング、および各手順の細部は Release・構成により差異があるため要確認とします。上位SMSインフラ(SMS-GMSC / IP-SM-GW / SMS-SC)の詳細は本ページの範囲外です。
3GPP Specification¶
- 3GPP TS 29.540 — Nsmsf_SMService サービス(SMS over NAS, N20)。個別章番号は要確認
- 3GPP TS 23.501 §6.2.13 — SMSF(SMS Function)の役割・定義
- 3GPP TS 23.502 — SMS関連手順(SMS有効化・MO/MT SMS の手順)。個別章番号は要確認
- 3GPP TS 29.500 / TS 29.501 — SBI framework(技術規約 / 設計原則・OpenAPI)。個別章番号は要確認
- 3GPP TS 33.501 — SBIのセキュリティ(TLS等)。個別章番号は要確認
注記(要確認): N20の実体が Nsmsf_SMService(TS 29.540)であること、参照点N20とサービスNsmsfが同じ連携の2つの見方であることは、3GPPアーキテクチャの一般的整理です。各サービスオペレーションの正確な名称・リソースURI・章番号は Release により差異があるため個別には要確認とします。
Summary¶
- N20は AMF ⇔ SMSF を結ぶ参照点で、SBI(Service Based Interface)である(Protocolは HTTP/2 + JSON over TLS)。
- SMS over NAS の中核: UEのSMSは NAS(N1) でAMFへ届き、AMFが N20でSMSFへ中継、SMSFが上位SMSインフラへ橋渡しする。
- N20の実体はSMSFのサービス Nsmsf_SMService(TS 29.540)。参照点N20 = サービスNsmsf_SMService は同じ連携の2つの見方。
- SMSFは N21 で UDM と連携し、加入者のSMS対応を確認・登録する。
- 4Gの SGs(MME⇔MSC)/ SGd(SMS配送) が担っていたSMSの取り回しに相当し、5GではSMSF + N20が担う(対応は要確認)。
Next Step¶
- SMSF — N20の相手側。SMS over NASを担うNF
- N21 — SMSFがUDMと連携しSMS加入を確認する参照点
- AMF — NAS(N1)でSMSを受け、N20でSMSFへ中継するNF
- Interface辞典 — N1・N21 ほか参照点の確認
- Message辞典 / Protocol辞典 — 用語・SBIプロトコルの確認