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N13 — AUSF ⇔ UDM(Nudm_UEAuthentication 参照点)

難易度: 中級 / 想定学習時間: 18分 / 接続点: AUSF ⇔ UDM(ARPF) / Protocol: HTTP/2 + JSON (SBI) / 関連Interface: N12, N8, N10

学習目標

このページを読み終えると、次のことができるようになります。

  • N13が SBI(Service Based Interface) であり、その実体がUDMの提供するサービス Nudm_UEAuthentication(TS 29.503) であることを説明できる。
  • AUSFがUDM内部の ARPF(Authentication credential Repository and Processing Function) から、認証方式の指示認証ベクトルを取得する流れを説明できる。
  • SIDF(Subscription Identifier De-concealing Function) による SUCI→SUPI の復号がUDM側の機能であることを説明できる。
  • 「参照点N13」と「サービスNudm_UEAuthentication」が同じものの2つの見方であることを説明できる。
  • 4G(EPC)の S6a の Authentication Information Retrieval(HSS→MME, Diameter) との対応関係を説明できる。

前提知識

先に以下を理解しておくとスムーズです。

  • SBA / SBI と HTTP/2・TLS の位置づけ → Protocol辞典
  • N13の両端のNF → AUSF / UDM
  • 認証手続き(5G-AKA / EAP-AKA')の全体像 → Authentication
  • N13の手前でAMF(SEAF)とAUSFを結ぶ参照点 → N12

Why — なぜ必要なのか

UEを認証するには、加入者の長期鍵Kに基づく認証ベクトル(照合材料)が必要です。しかしこの長期鍵Kは最も秘匿すべき原本であり、これを保持・処理してよいのはネットワーク側では UDM 内部の ARPF だけです。認証の司令塔である AUSF は、Kそのものは持たず、ARPFが生成した派生データ(認証ベクトル)と「どの方式で認証するか」の指示を受け取って認証を進めます。

この「AUSFがUDM/ARPFへ認証方式と認証ベクトルを取り寄せる道」がN13です。N13が無ければ、AUSFは加入者ごとの認証材料を得られず、5G-AKAやEAP-AKA'による認証を成立させられません。あわせて、SUCI(秘匿された恒久ID)を SUPI に戻す復号(SIDF)もUDM側で行われ、その要求もこのN13経路を通ります。

例え話: N13は、審査部門(AUSF)が本社の身元台帳(UDM/ARPF)に問い合わせるホットラインです。審査部門は「この客の照合材料(認証ベクトル)と審査方式を出して」と依頼します。台帳は秘密の原本(長期鍵K)は決して外に出さず、照合用に加工した派生データだけを渡します。原本は本社の金庫(ARPF)に閉じたまま、というのが要点です。

Overview — 概要

N13は AUSF ⇔ UDM を結ぶ参照点です。N13はSBI(Service Based Interface)である点が重要で、NF同士がWeb API(HTTP)でサービスを呼び合う仕組みに則り、共通の転送として HTTP/2 + JSON(RESTful)over TLS を用います。

N13の実体は、UDMが提供するサービス Nudm_UEAuthentication(TS 29.503) です。AUSFはこのサービスを呼び出し(認証情報の取得: Get)、UDMは内部の ARPF で長期鍵Kから認証方式(5G-AKA / EAP-AKA')を決定し、認証ベクトル(5G HE AV 等) を生成してAUSFへ返します。また SIDF による SUCI→SUPI の復号もUDM側で実行されます。

参照点N13とサービスNudm_UEAuthenticationは同じものの2つの見方

3GPPのアーキテクチャ図では 参照点として N13(AUSF⇔UDM) が示されますが、SBA(サービス化)ではこれが実体として UDMのサービス Nudm_UEAuthentication として実装されます。つまり「N13」と「Nudm_UEAuthentication」は、同じAUSF⇔UDM間の連携を、参照点の視点/サービスの視点で見たものです。どちらも指しているものは同一で、呼び方(視点)が違うだけ、と捉えてください。

Basic Concept — 初心者向け説明

N13を、審査部門が身元台帳から照合材料を取り寄せるWeb APIに例えます。

あなたのスマホがネットワークに登録しようとすると、認証の司令塔であるAUSFが動きます。AUSFは「この客をどの方式で審査すればいい? 照合材料は?」を自分では作れません。加入者の秘密の原本(長期鍵K)を持っているのは本社の身元台帳、すなわちUDM内部のARPFだけだからです。

そこでAUSFは、身元台帳のWeb API(Nudm_UEAuthentication)へ「この客(SUCI/SUPI)の認証情報をください」とリクエストします。台帳側は、まず秘匿IDのSUCIを本来のSUPIへ復号(SIDF)し、ARPFで認証方式(5G-AKA / EAP-AKA')を決めて認証ベクトルを生成し、それをAUSFへ返します。原本の鍵Kそのものは決して外に出しません——出すのは照合用の派生データだけです。

この問い合わせは、専用の電話回線(N2/N4のような専用プロトコル)ではなく、社内Webシステム(HTTP)でリクエストを投げて回答をもらうイメージで、要求も応答も人間に読みやすい JSON でやり取りされます。これが SBI(Service Based Interface) =NF同士がWeb API(HTTP/2)で会話する仕組みです。

Protocol / Transport

項目 内容
Protocol HTTP/2 + JSON(RESTful)— SBI(Service Based Interface)の共通スタック
サービス Nudm_UEAuthentication(UDMが提供)— TS 29.503
SBI framework TS 29.500 / TS 29.501 系(SBIの共通規約・OpenAPI定義)
下位Transport TCP、TLS で保護(機密性・完全性・認証)— TS 33.501
ポート SBIの待受ポートは実装依存(NRF登録のエンドポイントで解決)。特定番号は断定しない
特徴 専用L4プロトコルではなくWeb技術ベース。HTTPメソッド+リソースURIで操作。RESTful

N2/N4のような専用L4ではなくWeb技術ベース

N2は NGAP over SCTP:38412、N4は PFCP over UDP という専用の下位プロトコルを持ちますが、N13にはそれらは一切当てはまりません。N13はSBIなので、他のSBI(N8/N10/N12 等)と同じく HTTP/2 over TLS を共通の土台として使います。したがってN13の解析にSCTP固有のフィルタやPFCPのポート番号を流用してはいけません。

Architecture

N13がAUSFとUDMを結び、その手前でN12がAMF(SEAF)とAUSFを結ぶ、認証データの取得経路を示します。

flowchart LR
  AMF["AMF (SEAF)"]
  AUSF["AUSF"]
  UDM["UDM (ARPF/SIDF)"]
  UDR[("UDR (加入・認証データ)")]

  AMF == "N12 (Nausf_UEAuthentication)" ==> AUSF
  AUSF == "N13 (Nudm_UEAuthentication)" ==> UDM
  UDM -.-> UDR

  classDef ctrl fill:#efe,stroke:#3a3,stroke-width:2px;
  class AUSF,UDM ctrl;

図の読み方: 太い線(==>)のN13が、AUSF⇔UDMの認証情報取得(SBI/HTTP2)です。AUSFはN13でUDM/ARPFから認証方式の指示と認証ベクトルを取得し、SIDFによるSUCI→SUPI復号もUDM側で行われます。取得したベクトルを使い、AUSFは手前の N12(Nausf_UEAuthentication) でSEAF(AMF内)と実際の認証手続きを進めます。UDMは加入・認証データを内部的にUDRから参照します(点線)。N13は「認証材料を取り寄せる道」、N12は「取り寄せた材料でUEと認証をやり取りする道」という役割分担に注目してください。

利用Procedure

N13は Registration 中の認証手続きの中で、AUSFがUDMへ認証情報を問い合わせる際に使われます。

  • 認証情報の取得(Get): AUSFが Nudm_UEAuthentication_Get(SUCI または SUPI を指定)でUDMへ問い合わせる。
  • UDM側の処理: UDMは SIDF でSUCIをSUPIへ復号し、ARPF で認証方式(5G-AKA / EAP-AKA')を決定して認証ベクトルを生成し、AUSFへ返却する。
  • 認証の進行: AUSFは受け取ったベクトルを用い、N12 でSEAF(AMF内)と認証手続きを実行する。
  • 結果の確認: 認証完了後、AUSFが認証結果をUDMへ通知・確認する(後述の ResultConfirmation)。

手順の詳細な流れ(メッセージシーケンス、5G-AKA/EAP-AKA'の分岐、認証ベクトルの要素・導出)は Authentication に集約されています。手順の細部・AV要素/導出の細部はそちらを参照してください(導出細部は要確認)。

主なMessage

N13はSBIなので、メッセージはHTTPメソッド + リソース操作の形を取ります(NGAPのようなprocedureCodeではなくRESTful操作)。代表的なサービスオペレーションは次のとおりです。

サービスオペレーション HTTP操作(概念例) 用途
Nudm_UEAuthentication_Get POST(認証情報の取得要求) 認証方式の指示+認証ベクトルの取得(SUCI復号を含む)
Nudm_UEAuthentication_ResultConfirmation POST(結果通知) 認証結果のUDMへの確認・通知

HTTP操作の対応は概念整理です: 上表の「HTTP操作」は理解のための対応づけであり、各オペレーションの正確なメソッド・リソースURI・呼び出し方向はTS 29.503のOpenAPI定義に従います。厳密なメソッド割り当ては要確認とします。各メッセージの詳細は Message辞典 を参照してください。

Packet Analysis (Wireshark)

N13はSBIなので、キャプチャ上は HTTP/2 として観測されます(NGAP/SCTPのようなL4専用プロトコルは現れません)。

目的 Display Filter
HTTP/2メッセージを抽出 http2
ヘッダのパスで絞る(概念) http2.headers.path:pathnudm-ueau を含む)
JSONボディを見る json(復号後)

Decodeの見どころ:

  • N13は TLSで暗号化されます。中身(HTTP/2ヘッダやJSONボディ)を見るには復号鍵(TLSセッションキー等)が必要です。鍵が無ければ tls の暗号化ペイロードとしてしか見えません。
  • 復号できれば、HTTP/2の ヘッダ:path.../nudm-ueau/... を含むリソースパス)でオペレーションを識別できます。
  • ボディは JSON(認証方式の指示、認証ベクトル要素等)ですが、認証ベクトルは特に機微な情報であり、TLSで厳重に保護されます。復号鍵が無い限り中身は見えません。
  • N2のNGAP(バイナリ、SCTP上)と違い、N13はWeb的(HTTP/JSON)である点が観察の要です。SCTP固有のフィルタ(sctp.port 等)は使いません

EPCとの比較

  • 4Gでは: MMEは認証時、HSS から認証ベクトル(AV)を取得していました。これが S6aAuthentication Information Retrieval 手続き(Diameterベース、TS 29.272)です。長期鍵Kと認証ベクトル生成はHSS側にありました。
  • 5Gでは: AUSFが N13(Nudm_UEAuthentication)UDM/ARPF から認証方式の指示と認証ベクトルを取得します。Diameterから HTTP/2 + JSON(SBI) へ置き換わり(TS 29.503)、さらに恒久ID秘匿のための SIDF(SUCI→SUPI復号) がUDM側に加わりました。
4G (EPC) 5G (5GC)
S6a の Authentication Information Retrieval(AV取得部, HSS→MME) N13(AUSF ⇔ UDM)
Diameter(専用L4上) SBI: HTTP/2 + JSON over TLS
TS 29.272(S6a) TS 29.503(Nudm_UEAuthentication)
HSS(長期鍵K・AV生成) UDM(ARPF: K・AV生成、SIDF: SUCI復号)

4Gと5Gで「認証ベクトルをネットワーク側の加入者データ機能から取り寄せる」思想は共通ですが、5Gでは SUCIによる恒久ID秘匿と、それをSUPIへ戻す SIDF復号がUDM側に増えた点が大きな違いです。

3GPP Specification

  • 3GPP TS 29.503 — Nudm_UEAuthentication サービス(認証情報取得, N13の実体)。個別章番号は要確認
  • 3GPP TS 33.501 — 5Gセキュリティ(認証方式 5G-AKA / EAP-AKA'、認証ベクトル、SIDF、ARPF、長期鍵K・AV導出)。個別章番号は要確認
  • 3GPP TS 29.500 / TS 29.501 — SBI framework(技術規約 / 設計原則・OpenAPI)。個別章番号は要確認
  • 3GPP TS 23.501 §4 — システムアーキテクチャと参照点(N13の定義)
  • 3GPP TS 23.502 — 手続き(登録・認証手続きにおけるN13の利用)

注記(要確認): N13の実体が Nudm_UEAuthentication(TS 29.503)であること、認証方式・認証ベクトル・SIDF・ARPFの規定が TS 33.501 にあること、SBI共通framework が TS 29.500/29.501 系であることは、3GPPアーキテクチャの一般的整理です。各サービスオペレーションの細目章番号・正確なリソースURI・認証ベクトルの要素構成は Release により差異があるため個別には要確認とします。長期鍵K・AV導出の細部は TS 33.501 を参照してください。

Summary

  • N13は AUSF ⇔ UDM(ARPF) を結ぶ参照点で、SBI(Service Based Interface)であり、Protocolは HTTP/2 + JSON over TLS
  • 実体はUDMが提供するサービス Nudm_UEAuthentication(TS 29.503)
  • AUSFはN13で 認証方式の指示(5G-AKA / EAP-AKA')認証ベクトル を取得する。長期鍵Kからのベクトル生成は ARPFSUCI→SUPI 復号(SIDF) もUDM側の機能。
  • 参照点N13 = サービスNudm_UEAuthentication は同じAUSF⇔UDM連携の2つの見方。
  • 4Gの S6a Authentication Information Retrieval(HSS→MME, Diameter, TS 29.272) に相当し、5Gでは SBI化(TS 29.503)+ SUCI/SIDF による恒久ID秘匿が追加された。

Next Step

  • UDM — N13の相手側。ARPF(K・AV生成)/SIDF(SUCI復号)を内包
  • AUSF — N13でUDMから認証材料を取得し、N12でSEAFと認証を進める認証の司令塔
  • Authentication — 5G-AKA / EAP-AKA' 認証手続きの詳細
  • N12 — AMF(SEAF)⇔AUSF の参照点(N13の手前)
  • N8 — AMF⇔UDM の参照点(加入者データ管理)
  • Interface辞典 — 各参照点の確認