N13 — AUSF ⇔ UDM(Nudm_UEAuthentication 参照点)¶
学習目標¶
このページを読み終えると、次のことができるようになります。
- N13が SBI(Service Based Interface) であり、その実体がUDMの提供するサービス Nudm_UEAuthentication(TS 29.503) であることを説明できる。
- AUSFがUDM内部の ARPF(Authentication credential Repository and Processing Function) から、認証方式の指示と認証ベクトルを取得する流れを説明できる。
- SIDF(Subscription Identifier De-concealing Function) による SUCI→SUPI の復号がUDM側の機能であることを説明できる。
- 「参照点N13」と「サービスNudm_UEAuthentication」が同じものの2つの見方であることを説明できる。
- 4G(EPC)の S6a の Authentication Information Retrieval(HSS→MME, Diameter) との対応関係を説明できる。
前提知識¶
先に以下を理解しておくとスムーズです。
- SBA / SBI と HTTP/2・TLS の位置づけ → Protocol辞典
- N13の両端のNF → AUSF / UDM
- 認証手続き(5G-AKA / EAP-AKA')の全体像 → Authentication
- N13の手前でAMF(SEAF)とAUSFを結ぶ参照点 → N12
Why — なぜ必要なのか¶
UEを認証するには、加入者の長期鍵Kに基づく認証ベクトル(照合材料)が必要です。しかしこの長期鍵Kは最も秘匿すべき原本であり、これを保持・処理してよいのはネットワーク側では UDM 内部の ARPF だけです。認証の司令塔である AUSF は、Kそのものは持たず、ARPFが生成した派生データ(認証ベクトル)と「どの方式で認証するか」の指示を受け取って認証を進めます。
この「AUSFがUDM/ARPFへ認証方式と認証ベクトルを取り寄せる道」がN13です。N13が無ければ、AUSFは加入者ごとの認証材料を得られず、5G-AKAやEAP-AKA'による認証を成立させられません。あわせて、SUCI(秘匿された恒久ID)を SUPI に戻す復号(SIDF)もUDM側で行われ、その要求もこのN13経路を通ります。
例え話: N13は、審査部門(AUSF)が本社の身元台帳(UDM/ARPF)に問い合わせるホットラインです。審査部門は「この客の照合材料(認証ベクトル)と審査方式を出して」と依頼します。台帳は秘密の原本(長期鍵K)は決して外に出さず、照合用に加工した派生データだけを渡します。原本は本社の金庫(ARPF)に閉じたまま、というのが要点です。
Overview — 概要¶
N13は AUSF ⇔ UDM を結ぶ参照点です。N13はSBI(Service Based Interface)である点が重要で、NF同士がWeb API(HTTP)でサービスを呼び合う仕組みに則り、共通の転送として HTTP/2 + JSON(RESTful)over TLS を用います。
N13の実体は、UDMが提供するサービス Nudm_UEAuthentication(TS 29.503) です。AUSFはこのサービスを呼び出し(認証情報の取得: Get)、UDMは内部の ARPF で長期鍵Kから認証方式(5G-AKA / EAP-AKA')を決定し、認証ベクトル(5G HE AV 等) を生成してAUSFへ返します。また SIDF による SUCI→SUPI の復号もUDM側で実行されます。
参照点N13とサービスNudm_UEAuthenticationは同じものの2つの見方
3GPPのアーキテクチャ図では 参照点として N13(AUSF⇔UDM) が示されますが、SBA(サービス化)ではこれが実体として UDMのサービス Nudm_UEAuthentication として実装されます。つまり「N13」と「Nudm_UEAuthentication」は、同じAUSF⇔UDM間の連携を、参照点の視点/サービスの視点で見たものです。どちらも指しているものは同一で、呼び方(視点)が違うだけ、と捉えてください。
Basic Concept — 初心者向け説明¶
N13を、審査部門が身元台帳から照合材料を取り寄せるWeb APIに例えます。
あなたのスマホがネットワークに登録しようとすると、認証の司令塔であるAUSFが動きます。AUSFは「この客をどの方式で審査すればいい? 照合材料は?」を自分では作れません。加入者の秘密の原本(長期鍵K)を持っているのは本社の身元台帳、すなわちUDM内部のARPFだけだからです。
そこでAUSFは、身元台帳のWeb API(Nudm_UEAuthentication)へ「この客(SUCI/SUPI)の認証情報をください」とリクエストします。台帳側は、まず秘匿IDのSUCIを本来のSUPIへ復号(SIDF)し、ARPFで認証方式(5G-AKA / EAP-AKA')を決めて認証ベクトルを生成し、それをAUSFへ返します。原本の鍵Kそのものは決して外に出しません——出すのは照合用の派生データだけです。
この問い合わせは、専用の電話回線(N2/N4のような専用プロトコル)ではなく、社内Webシステム(HTTP)でリクエストを投げて回答をもらうイメージで、要求も応答も人間に読みやすい JSON でやり取りされます。これが SBI(Service Based Interface) =NF同士がWeb API(HTTP/2)で会話する仕組みです。
Protocol / Transport¶
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| Protocol | HTTP/2 + JSON(RESTful)— SBI(Service Based Interface)の共通スタック |
| サービス | Nudm_UEAuthentication(UDMが提供)— TS 29.503 |
| SBI framework | TS 29.500 / TS 29.501 系(SBIの共通規約・OpenAPI定義) |
| 下位Transport | TCP、TLS で保護(機密性・完全性・認証)— TS 33.501 |
| ポート | SBIの待受ポートは実装依存(NRF登録のエンドポイントで解決)。特定番号は断定しない |
| 特徴 | 専用L4プロトコルではなくWeb技術ベース。HTTPメソッド+リソースURIで操作。RESTful |
N2/N4のような専用L4ではなくWeb技術ベース
N2は NGAP over SCTP:38412、N4は PFCP over UDP という専用の下位プロトコルを持ちますが、N13にはそれらは一切当てはまりません。N13はSBIなので、他のSBI(N8/N10/N12 等)と同じく HTTP/2 over TLS を共通の土台として使います。したがってN13の解析にSCTP固有のフィルタやPFCPのポート番号を流用してはいけません。
Architecture¶
N13がAUSFとUDMを結び、その手前でN12がAMF(SEAF)とAUSFを結ぶ、認証データの取得経路を示します。
flowchart LR
AMF["AMF (SEAF)"]
AUSF["AUSF"]
UDM["UDM (ARPF/SIDF)"]
UDR[("UDR (加入・認証データ)")]
AMF == "N12 (Nausf_UEAuthentication)" ==> AUSF
AUSF == "N13 (Nudm_UEAuthentication)" ==> UDM
UDM -.-> UDR
classDef ctrl fill:#efe,stroke:#3a3,stroke-width:2px;
class AUSF,UDM ctrl;
図の読み方: 太い線(==>)のN13が、AUSF⇔UDMの認証情報取得(SBI/HTTP2)です。AUSFはN13でUDM/ARPFから認証方式の指示と認証ベクトルを取得し、SIDFによるSUCI→SUPI復号もUDM側で行われます。取得したベクトルを使い、AUSFは手前の N12(Nausf_UEAuthentication) でSEAF(AMF内)と実際の認証手続きを進めます。UDMは加入・認証データを内部的にUDRから参照します(点線)。N13は「認証材料を取り寄せる道」、N12は「取り寄せた材料でUEと認証をやり取りする道」という役割分担に注目してください。
利用Procedure¶
N13は Registration 中の認証手続きの中で、AUSFがUDMへ認証情報を問い合わせる際に使われます。
- 認証情報の取得(Get): AUSFが
Nudm_UEAuthentication_Get(SUCI または SUPI を指定)でUDMへ問い合わせる。 - UDM側の処理: UDMは SIDF でSUCIをSUPIへ復号し、ARPF で認証方式(5G-AKA / EAP-AKA')を決定して認証ベクトルを生成し、AUSFへ返却する。
- 認証の進行: AUSFは受け取ったベクトルを用い、N12 でSEAF(AMF内)と認証手続きを実行する。
- 結果の確認: 認証完了後、AUSFが認証結果をUDMへ通知・確認する(後述の ResultConfirmation)。
手順の詳細な流れ(メッセージシーケンス、5G-AKA/EAP-AKA'の分岐、認証ベクトルの要素・導出)は Authentication に集約されています。手順の細部・AV要素/導出の細部はそちらを参照してください(導出細部は要確認)。
主なMessage¶
N13はSBIなので、メッセージはHTTPメソッド + リソース操作の形を取ります(NGAPのようなprocedureCodeではなくRESTful操作)。代表的なサービスオペレーションは次のとおりです。
| サービスオペレーション | HTTP操作(概念例) | 用途 |
|---|---|---|
| Nudm_UEAuthentication_Get | POST(認証情報の取得要求) | 認証方式の指示+認証ベクトルの取得(SUCI復号を含む) |
| Nudm_UEAuthentication_ResultConfirmation | POST(結果通知) | 認証結果のUDMへの確認・通知 |
HTTP操作の対応は概念整理です: 上表の「HTTP操作」は理解のための対応づけであり、各オペレーションの正確なメソッド・リソースURI・呼び出し方向はTS 29.503のOpenAPI定義に従います。厳密なメソッド割り当ては要確認とします。各メッセージの詳細は Message辞典 を参照してください。
Packet Analysis (Wireshark)¶
N13はSBIなので、キャプチャ上は HTTP/2 として観測されます(NGAP/SCTPのようなL4専用プロトコルは現れません)。
| 目的 | Display Filter |
|---|---|
| HTTP/2メッセージを抽出 | http2 |
| ヘッダのパスで絞る(概念) | http2.headers.path(:path に nudm-ueau を含む) |
| JSONボディを見る | json(復号後) |
Decodeの見どころ:
- N13は TLSで暗号化されます。中身(HTTP/2ヘッダやJSONボディ)を見るには復号鍵(TLSセッションキー等)が必要です。鍵が無ければ
tlsの暗号化ペイロードとしてしか見えません。 - 復号できれば、HTTP/2の ヘッダ(
:pathに.../nudm-ueau/...を含むリソースパス)でオペレーションを識別できます。 - ボディは JSON(認証方式の指示、認証ベクトル要素等)ですが、認証ベクトルは特に機微な情報であり、TLSで厳重に保護されます。復号鍵が無い限り中身は見えません。
- N2のNGAP(バイナリ、SCTP上)と違い、N13はWeb的(HTTP/JSON)である点が観察の要です。SCTP固有のフィルタ(
sctp.port等)は使いません。
EPCとの比較¶
- 4Gでは: MMEは認証時、HSS から認証ベクトル(AV)を取得していました。これが S6a の Authentication Information Retrieval 手続き(Diameterベース、TS 29.272)です。長期鍵Kと認証ベクトル生成はHSS側にありました。
- 5Gでは: AUSFが N13(Nudm_UEAuthentication) で UDM/ARPF から認証方式の指示と認証ベクトルを取得します。Diameterから HTTP/2 + JSON(SBI) へ置き換わり(TS 29.503)、さらに恒久ID秘匿のための SIDF(SUCI→SUPI復号) がUDM側に加わりました。
| 4G (EPC) | 5G (5GC) |
|---|---|
| S6a の Authentication Information Retrieval(AV取得部, HSS→MME) | N13(AUSF ⇔ UDM) |
| Diameter(専用L4上) | SBI: HTTP/2 + JSON over TLS |
| TS 29.272(S6a) | TS 29.503(Nudm_UEAuthentication) |
| HSS(長期鍵K・AV生成) | UDM(ARPF: K・AV生成、SIDF: SUCI復号) |
4Gと5Gで「認証ベクトルをネットワーク側の加入者データ機能から取り寄せる」思想は共通ですが、5Gでは SUCIによる恒久ID秘匿と、それをSUPIへ戻す SIDF復号がUDM側に増えた点が大きな違いです。
3GPP Specification¶
- 3GPP TS 29.503 — Nudm_UEAuthentication サービス(認証情報取得, N13の実体)。個別章番号は要確認
- 3GPP TS 33.501 — 5Gセキュリティ(認証方式 5G-AKA / EAP-AKA'、認証ベクトル、SIDF、ARPF、長期鍵K・AV導出)。個別章番号は要確認
- 3GPP TS 29.500 / TS 29.501 — SBI framework(技術規約 / 設計原則・OpenAPI)。個別章番号は要確認
- 3GPP TS 23.501 §4 — システムアーキテクチャと参照点(N13の定義)
- 3GPP TS 23.502 — 手続き(登録・認証手続きにおけるN13の利用)
注記(要確認): N13の実体が Nudm_UEAuthentication(TS 29.503)であること、認証方式・認証ベクトル・SIDF・ARPFの規定が TS 33.501 にあること、SBI共通framework が TS 29.500/29.501 系であることは、3GPPアーキテクチャの一般的整理です。各サービスオペレーションの細目章番号・正確なリソースURI・認証ベクトルの要素構成は Release により差異があるため個別には要確認とします。長期鍵K・AV導出の細部は TS 33.501 を参照してください。
Summary¶
- N13は AUSF ⇔ UDM(ARPF) を結ぶ参照点で、SBI(Service Based Interface)であり、Protocolは HTTP/2 + JSON over TLS。
- 実体はUDMが提供するサービス Nudm_UEAuthentication(TS 29.503)。
- AUSFはN13で 認証方式の指示(5G-AKA / EAP-AKA') と 認証ベクトル を取得する。長期鍵Kからのベクトル生成は ARPF、SUCI→SUPI 復号(SIDF) もUDM側の機能。
- 参照点N13 = サービスNudm_UEAuthentication は同じAUSF⇔UDM連携の2つの見方。
- 4Gの S6a Authentication Information Retrieval(HSS→MME, Diameter, TS 29.272) に相当し、5Gでは SBI化(TS 29.503)+ SUCI/SIDF による恒久ID秘匿が追加された。
Next Step¶
- UDM — N13の相手側。ARPF(K・AV生成)/SIDF(SUCI復号)を内包
- AUSF — N13でUDMから認証材料を取得し、N12でSEAFと認証を進める認証の司令塔
- Authentication — 5G-AKA / EAP-AKA' 認証手続きの詳細
- N12 — AMF(SEAF)⇔AUSF の参照点(N13の手前)
- N8 — AMF⇔UDM の参照点(加入者データ管理)
- Interface辞典 — 各参照点の確認