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BSF — Binding Support Function

難易度: 中級 / 想定学習時間: 15分 / 関連NF: PCF, SMF, NEF/AF / 関連Interface: SBI(Nbsf)

学習目標

このページを読み終えると、次のことができるようになります。

  • BSFの役割(あるPDUセッションと担当PCFの対応=PCFバインディング)を一言で説明できる。
  • なぜマルチPCF環境でBSFが必要になるのか(PCFが複数あると担当が定まらない問題)を説明できる。
  • SMF側(SMPolicy)とAF/NEF側(AFセッション)が同じPCFに揃う必要がある理由を説明できる。
  • BSFがPCC(Policy and Charging Control)フレームワークの中でどこに位置づくかを説明できる。

前提知識

先に以下を理解しておくとスムーズです。

  • PCFの役割とPCC(ポリシー・課金制御)の基礎 → PCF
  • SBA(Service Based Architecture)とSBIの基礎 → ホーム
  • 各Interfaceの位置づけ → Interface辞典

この章で学べること

まずWhy(BSFが無いとマルチPCF環境で何が困るか)から入り、What(Binding情報・役割・提供API=Nbsf_Management)を表とMermaid図で整理し、最後にHow(Procedureでの登場、EPC比較、参照Spec)へ進みます。

Why — なぜ必要なのか

PCFが複数配置された環境では、あるPDUセッションのポリシーを扱うPCFは、1つに定まっている必要があります。ところが、そのセッションに関わる要素は複数あります。ひとつはSMF経由で確立されるSMPolicy(SM Policy Association)、もうひとつはAF/NEF経由で入ってくる**AFセッション(アプリからのQoS要求等)**です。

もしSMF側とAF/NEF側が、同じセッションのPCFを別々に探すと、たまたま別々のPCFに繋がってしまい、同一セッションのポリシーが2つのPCFに分裂して矛盾します。これを防ぐには「このセッション(このUE IP/DNN/S-NSSAI)は、どのPCFが担当か」という共通の名簿が要ります。この名簿を管理するのがBSF(Binding Support Function)です。

例え話: BSFは、担当者(PCF)の割り当てを記録した割り当て台帳です。台帳が無いと、複数の窓口(SMF側とAF/NEF側)が同じ案件を別々の担当者に繋いでしまい、指示が食い違います。台帳を1つ持ち、皆がそれを見て担当者を揃えることで齟齬を防ぎます。

Overview — 概要

BSF(Binding Support Function)は、PDUセッションと担当PCFの結合情報(Binding情報)を管理するNFです。動作の流れは次の通りです。

  • 登録: PCFがそのセッションのポリシーを確立する際、Binding情報(UE IPアドレス/DNN/S-NSSAI ↔ 自身=担当PCFの識別子)をBSFへ登録します。
  • 照会: そのセッションに関わるAF/NEF(SCP経由の間接通信ではSCP)が、「このセッションのポリシーを扱うPCFはどれか」をBSFへ照会(Discovery)し、SMFが選んだのと同じPCFへ到達します。SMF自身は PCF を PCF Discovery and Selection(NRF・ローカル設定等。TS 23.501 §6.3.7.1、要確認)で選ぶ側であり、BSFへの登録は行いません(Discovery の Consumer の範囲は配備・Release 依存で要確認)。

これにより、同一PDUセッションに関わる複数の経路(SMPolicyとAFセッション)が、同じPCFに揃うことが保証されます。BSFはPCC(Policy and Charging Control)フレームワークにおけるマルチPCF整合の要です。

Basic Concept — 初心者向け説明

BSFは「担当者を一致させるための台帳照会サービス」だと考えると分かりやすいです。

  • あるPDUセッション(=ひとりのお客様の案件)には、UE IPアドレスやDNN・S-NSSAIといった目印が付いています。
  • PCF(担当者)は、案件を引き受けたら「この目印の案件は私が担当」と台帳(BSF)に記帳します。
  • 後から別の窓口(AF/NEF 等)が同じ案件を扱うとき、目印をキーに台帳を引いて「担当は誰か」を確認し、同じ担当者(同じPCF)に繋ぎます。

こうして、複数の窓口が同じ案件について必ず同じ担当者にたどり着けるようになります。

Network Function 詳細

項目 内容
役割 PDUセッションと担当PCFの結合情報(Binding情報)を管理し、マルチPCF環境で同一セッションのPCFを一意に解決させる
保持情報 Binding情報(PcfBinding)= UEアドレス(IPv4アドレス/IPv6 prefix/MACアドレス)、SUPI/GPSI、DNN、S-NSSAI などの目印 ↔ 担当PCFのID/アドレス(PDU Session ID はキーに含まれない。属性の詳細は TS 29.521、節番号要確認)
利用する主なAPI(他NFへ呼ぶ) NRF(Discovery)等でのNF発見。連携は実装/構成依存
提供するAPI(自分が公開) Nbsf_Management(Register/Deregister/Discovery、Release により Update/Subscribe・Notify も。追加 Release は要確認)— Binding情報の登録・削除・照会・更新・変化通知(TS 29.521)
関連Interface SBI(Nbsf) — PCF/AF/NEF(SCP 等)と BSF の間
障害時の影響 マルチPCF構成でPCFの不整合が起き、AFセッションとSMポリシーの結合(同一PCFへの集約)に失敗しうる。単一PCF構成では担当が自明のため影響は限定的

Architecture

BSFはPCFからのBinding登録を受け、AF/NEF(間接通信ではSCP)からのPCF照会に応える、結合情報のハブとして機能します。

flowchart LR
  PCF["PCF (担当ポリシー)"]
  BSF["BSF (バインディング管理)"]
  SMF["SMF"]
  AFNEF["AF / NEF (アプリ要求)"]

  SMF -- "PCF選択 + SM Policy Association (N7)" --> PCF
  PCF -- "Nbsf_Management_Register (Binding登録)" --> BSF
  AFNEF -. "Nbsf_Management_Discovery (PCF照会)" .-> BSF
  BSF -. "担当PCFを返却" .-> AFNEF
  AFNEF -. "担当PCFへ要求 (N5 等)" .-> PCF

図の読み方: SMFが選んだPCFは、セッションのポリシー確立時にBinding情報(UEアドレス/DNN/S-NSSAI 等 ↔ 自身)をBSFへ登録します。AF/NEFは同じセッションのPCFを知りたいときBSFへ照会(Discovery)し、BSFが担当PCFを返すことで、SMFと同一のPCFへ到達できます。BSFを配置するか、bindingをどう解決するかは実装/構成依存です。

Interface

BSFが持つ主なInterfaceと役割です。

Interface 両端 役割
SBI(Nbsf) PCF/AF/NEF(SCP 等)⇔ BSF Binding情報の登録・更新・削除(PCF→BSF)・照会(AF/NEF 等→BSF。Consumer の範囲は配備依存)。担当PCFの一意解決

BSF は SBI(Nbsf_Management)で連携し、固有のN番号参照点ページは持ちません。関連する参照点の一覧は Interface辞典 を参照してください。

Procedure での登場

  • SMポリシー確立時: PDUセッションのSM Policy Association確立に伴い、PCFがBinding情報をBSFへ登録します(応用文脈。マルチPCF構成で意味を持ちます)。
  • 外部AFのQoS要求時: 外部AFがNEF経由でQoS要求を行う際、そのセッションを扱うPCFをBSFで発見してから該当PCFへ要求を届けます。

これらは主にマルチPCF環境での整合を目的とした振る舞いで、単一PCF構成では担当が自明のため省略され得ます。ポリシー側の詳細は PCF、QoS要求の文脈は QoS を参照してください。手順の細部(メッセージ・IE等)は要確認です。

EPCとの比較

4G/EPCでは、DRA(Diameter Routing Agent) が、同一セッションに関わるDiameterシグナリング(Gx/Rx等)を同じPCRFへルーティングするバインディング/ルーティング支援を担っていました(PCRFのbinding)。5Gでは、この「同一セッションを同じポリシー決定点へ揃える」役割を、SBAの中で BSF として整理した、と捉えられます(要確認)。

4G (EPC) 5G (5GC)
DRA(Diameter Routing Agent)のbinding/ルーティング支援(Gx/Rx を同一PCRFへ集約) BSF(Binding Support Function、Nbsf)
PCRF(binding対象のポリシー決定点) PCF(binding対象のポリシー決定点)

DRAはDiameterルーティング全般を担う要素で、その一部機能(同一セッションのPCRF binding)がBSFに対応づく、という整理です。厳密な機能対応は要確認です。

Release差分

  • Rel-15: BSFの基本機能(Binding情報のRegister/Deregister/Discovery、Nbsf_Management)を規定。
  • Rel-16/Rel-17: Nbsf_Management に Update、さらに Subscribe/Unsubscribe/Notify が追加された(それぞれの追加 Release・Supported Feature 名・章番号は要確認)。詳細は BSF / PCF Binding を参照。

3GPP Specification

  • 3GPP TS 23.503 — BSFの定義はPCC(Policy and Charging Control)フレームワークを規定する本TSに含まれる。BSFはbinding/PCF発見支援の観点で位置づけられる。
  • 3GPP TS 23.501 — システムアーキテクチャの基本TSだが、§6.2(Network Functions)にBSF独立節を持たない点に注意(BSFの定義はTS 23.503側)。
  • 3GPP TS 29.521 — Nbsf_Management サービス(Register/Deregister/Discovery/Update/Subscribe・Notify。Release により異なる)のスタンダード仕様。個別章番号は要確認。

注記(要確認): BSFはTS 23.501 §6.2に独立した節を持たず、その定義・役割はPCCフレームワークを扱うTS 23.503に記述される点が、他のNF(AMF/SMF等)と異なります(NF辞典 と整合)。SBIはHTTP/2 + JSON で実現され、TLS はサポート必須・適用は事業者判断です(TS 33.501 §13.1、要確認)。

Summary

  • BSFはPDUセッションと担当PCFの結合情報(Binding情報)を管理し、マルチPCF環境でPCFを一意に解決させるNF。
  • Binding情報は「UEアドレス(IPv4/IPv6 prefix/MAC)・SUPI/GPSI・DNN・S-NSSAI 等 ↔ 担当PCF」で、PCFが登録し、主にAF/NEF(間接通信ではSCP)が照会する(Nbsf_Management: Register/Deregister/Discovery、Release により Update/Subscribe・Notify。TS 29.521)。
  • SMF側(SMPolicy)とAF/NEF側(AFセッション)を同じPCFに揃えることが目的で、これがマルチPCF整合の要。
  • 4G/EPCのDRA(PCRFのbinding/ルーティング支援)に相当する役割を、5GではBSFとしてSBAで整理した(要確認)。
  • BSFの定義はTS 23.503(PCCフレームワーク)にあり、TS 23.501 §6.2に独立節を持たない点に注意。

Next Step

  • PCF — BSFがbinding対象とするポリシー決定点
  • NEF — 外部AFの要求をPCFへ橋渡しする際にBSFを利用する側
  • QoS — AFのQoS要求とPCF発見の文脈
  • NF辞典 — BSFや関連NFの用語確認
  • Interface辞典 — SBI(Nbsf)の確認